日本経団連タイムス No.2757 (2005年2月24日)

マータイ・ケニア環境副大臣が来訪/地球環境・衛生問題で意見交換

−アフリカでの衝突回避へ/環境保護の徹底強調


日本経団連の奥田碩会長は21日、東京・大手町の経団連会館において、ケニアの環境副大臣で、ノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイ氏と、地球環境問題や衛生問題などについて懇談した。

同懇談会で奥田会長は、アフリカの環境問題の現状について質問。これに対してマータイ氏は、東アフリカにおいても環境問題は深刻化しており、対策を講じようとの気運が高まっていると説明した。その上でマータイ氏は、自身が進めている住民参加の「グリーンベルト(植林)運動」を紹介。同運動が、土地や環境の保全に有効であることを強調した。
さらに、マータイ氏は、来日してから日本語に「もったいない」という言葉があるのを知ったと述べ、「アフリカにおけるさまざまな衝突の原因には資源問題がある。こうした衝突を回避し、資源を持続可能的に上手に利用していくためには、環境保護を徹底し、『もったいない』の精神に基づいて、資源を大切にしていくことが必要」と語った。
衛生問題については奥田会長が、ジェネリックドラッグ(後発医薬品)を有効に活用することで、感染症などへの対応が、安全かつ経済的に進むのではないかとの考えを示した。

また、懇談会に出席した日本経団連自然保護協議会の大久保尚武会長は、同協議会の事業について、世界各国のNGOが行う自然保護や環境保全のプロジェクトに対し、年間60〜70件、総額約1億5000万円前後の支援を行っていると説明。これに対してマータイ氏は、グリーンベルト運動以外にも、コンゴ川流域の生態環境(森林)保全活動などの事業を行っていることを挙げ、日本経済界の理解と協力を求めた。

マータイ氏は14日に来日。気候変動枠組条約の京都議定書が16日に発効したのを記念して同日に京都市内で開かれた記念行事に参加し、基調講演を行ったほか、17日には愛知・豊田市の愛・地球博の長久手会場を視察。また18日には、首相官邸に小泉純一郎首相を訪ね、懇談した。

「グリーンベルト運動」を創設/ノーベル平和賞受賞

マータイ氏は、1940年生まれ。生物学者を志し、71年にはケニアのナイロビ大学で、東アフリカ出身の女性として初めての博士号を取得した。
また、77年には、有志とともに非政府組織である「グリーンベルト運動」を創設、植林運動を開始した。現在では、ケニア全土に約1500カ所の苗床があり、参加者は女性を中心に約8万人、植林した苗木は3000万本に達している。
またマータイ氏は、植林を単なる自然保護運動にとどめることなく、これを通じて貧しい人々の社会参加の意識を高めるとともに女性の地位向上を図り、ケニア社会の民主化促進に努力、「植林はケニアの民主化のシンボルになった」と評されている。
マータイ氏は2002年に、得票率98%という圧倒的な支持を得て国会議員に当選、03年には環境副大臣に就任した。04年には、植林など環境保全活動への貢献が評価され、ノーベル平和賞を受賞している。

【環境・技術本部環境担当】
Copyright © Nippon Keidanren