日本経団連タイムス No.2758 (2005年3月10日)

経済広報センターがシンポジウムを開催

−東アジア経済統合で内外の研究者が意見交換


日本経団連の関連組織である経済広報センター(奥田碩会長)は1日、東京・大手町の経団連会館で「東アジア経済統合の現状と展望〜日・中・韓・アセアンの視点〜」と題するシンポジウムを開催、同センターの会員など約150名が出席した。3つのセッションが行われた同シンポジウムでは、アセアンおよび中国、韓国から8名の経済研究者が、また日本側の研究者2名も加わって、意見を交換。アセアンおよび日本・中国・韓国(アセアン+3)を核とする「東アジア経済統合」について、幅広い議論を行った。

基調講演を行った浦田秀次郎・早稲田大学教授は、東アジアで進展している経済統合は、EUのような制度的フレームワークに基づくものではなく、市場ベースでのデ・ファクト(事実上)の統合であると述べるとともに、「そのデ・ファクトの統合をより強固にするための一つの方策として自由貿易協定(FTA)がある」と説明。
また、「経済統合には、さまざまな対外的・国内的障壁がある」と指摘した上で、それを克服するための具体的な処方箋として、多面的な地域協力や政治のリーダーシップ、さらに自由化によって被害をこうむる国内諸部門への補償措置などをあげた。

シンガポールのケサバパニー・東南アジア研究所(ISEAS)所長は、「アセアンは東アジア経済統合においてハブとなる用意がある」と述べた一方、アセアン各国間の経済格差の問題を指摘。その対応策として、「まずはアセアン内部の統合(AFTA)を着実に進めていくことが重要」との考えを示した。また、趙晋平・中国国務院発展研究センター副部長は、「北東アジア3国がFTAを締結すれば、東アジアの統合にとって大きな前進となる」と語り、日・中・韓の連携の必要性を強調。さらに、「統合には政治的に良好な関係が不可欠」とも付け加えた。

続いて、韓国、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピンの研究者が、それぞれの立場から見解を披露。同シンポジウムを通じて、アセアンと日・中・韓が「経済統合」という共通目標に向かいつつも、その実現にはさまざまな課題があることや、統合に向けてどこがリーダーシップをとるのか、アセアン+3以外のメンバーをどうするかなど、コンセンサスが得られていない問題が少なくないことも明らかになった。

最後に浦田教授は、「今後、域内でFTA交渉を推進すると同時に、産・官・学が一堂に会するなど、議論を深めていく必要がある」と締めくくった。

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