日本経団連タイムス No.2762 (2005年4月7日)

自由民主党と政策を語る会、自民党の政策・取り組みで意見交換

−独禁法改正や環境税創設問題、社会保障制度改革など


日本経団連(奥田碩会長)は3月29日、東京・大手町の経団連会館で、「自由民主党と政策を語る会」を開催した。同会には日本経団連の首脳役員や会員代表など約430名が出席、与謝野馨政務調査会長をはじめとする自民党の政策担当幹部26名と、同党の政策や取り組みに関する意見交換を行った(概要既報)。

■意見交換

奥田会長、与謝野政調会長のあいさつに続いて行われた意見交換では、まず日本経団連の西室泰三副会長が、財政の持続性の観点からも社会保障制度の一体的改革が必要であることを指摘。社会保障制度改革に当たっては、国民負担を増やさず、かつ自助努力を基礎とする社会の構築を基本とすべきとの考えを示した。また、少子・高齢化社会を広く国民全体で支えるために消費税を活用することなどにつき、自民党の考え方を質した。

続いて御手洗冨士夫副会長が、(1)独占禁止法改正に関連し、制裁や審査・審判のあり方について経済界の要望が実現するよう要請する (2)会社法近代化については、株主代表訴訟制度の見直しなど経済界の要望を盛り込んだ改正が進んでいることに感謝する (3)企業買収への防衛策については、会社法だけでなく関連法制度の整備を新しい会社法制の施行までに実施してほしい――と述べた。また、経済法規委員会消費者法部会の渡邉光一郎部会長は、政府が検討中の消費者団体訴訟制度の濫用の危険性について懸念を表明、濫訴防止策を検討するよう求めた。

千速晃副会長は、経団連環境自主行動計画の着実な実施など、経済界の地球温暖化対策への取り組みを紹介した上で、「環境と経済の両立」の観点から、その効果に疑問があり国際競争力にも深刻な影響を及ぼしかねない環境税の創設には、産業界を挙げて反対していると発言した。

柴田昌治副会長は労働基準法などを時代に合ったものに改めてほしいと述べ、一例として、一定の要件を満たすホワイトカラー労働者を労働時間の法的規制からはずすホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入を挙げた。

三木繁光副会長は、今年1月に日本経団連が発表した提言「わが国の基本問題を考える」に基づき、戦力の不保持を謳う憲法第9条第2項や厳格な憲法改正要件を定めた憲法第96条の見直しの必要性を指摘した。

与謝野政調会長らが回答

これに対し自民党の丹羽雄哉社会保障制度調査会長は、景気状況や少子・高齢化の進行具合を勘案しつつ、年金や医療、介護を一体的にとらえて国民負担軽減の観点から社会保障制度改革のあり方について検討を深めたいと回答。津島雄二税制調査会長は、国民負担率を50%以下に抑制する考えを示すとともに、2007年度を目途に消費税を含む税制体系の抜本的改革に着手することなどを明らかにした。

また独占禁止法の問題に関しては、平沼赳夫独禁法調査会長が、公正取引委員会における審査・審判のあり方などについて、内閣府に設置する研究会で、日本経団連の参加も得て検討する旨を説明。会社法については、甘利明企業統治に関する委員会委員長が、証券取引法等を含めた企業統治に関する法制度の再点検や、国際的標準にかなった敵対的買収防衛策の検討などの作業を進めていくと語った。

消費者団体訴訟制度に関しては、岸田文雄消費者問題に関するプロジェトチーム座長が、06年の通常国会に法案を提出する予定であると説明した上で、濫訴防止は重要であり、企業活動が萎縮することのないよう制度の検討を進めていく考えを明らかにした。

環境税問題については、野田毅石油等資源・エネルギー調査会長が回答。(1)COの大量排出国が参加していない京都議定書の枠組みそのものに問題があり、日本としてはこれらの国々を巻き込んでいく必要がある (2)議定書の目標達成に努力することと新税の導入の必要性はリンクしない (3)日本ではすでに炭素系エネルギーに対する課税が実施されており、環境税の創設を検討する際にはそれらとの調整が必須である (4)環境税が実態経済に与える影響を考慮し慎重に対応しなければならない――と述べた。

労働法制の問題については、森田一労働調査会長が、情報化社会の進行が産業構造や働く者の価値観、雇用ニーズを大きく変化させたとの見解を示した上で、ホワイトカラー・エグゼンプションについては、アメリカの例を学び、議論を進めていきたいとした。

憲法第9条に対する党の考え方については与謝野政調会長が、(1)第1項の戦争放棄の条項は残すという考えが大勢 (2)第2項は改める必要があり、国を守る実力組織の存在を憲法上明確化する方向で足並みが揃っている (3)国際協力・貢献に関する条項を第3項として追加すべきという有力な意見がある――と説明した。

EPA・FTA締結促進、外国人労働者受け入れなど/日本経団連側が意見を表明

■自由懇談

自由懇談では、日本経団連側から、市場化テストに関する法律の早期成立、経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)の締結促進、農業や外国人労働者受け入れ、科学技術創造立国推進の状況、住宅基本法の早期制定と住宅取得に際しての消費税負担の軽減などに関する意見が出された。

これに対して自民党からは、それぞれ「市場化テストのモデル事業を展開していく」(衛藤征士郎行政改革推進本部長)、「アジア諸国を大事にしつつFTA、EPA締結を積極的に推進する」(谷津義男FTA・EPAに関する特命委員長)、「人材育成、知的財産は科学技術政策の重点となる。また、重点4分野に加えて、原子力や宇宙関連、スーパーコンピューターなどの基盤技術に対しても力を入れていきたい」(尾身幸次科学技術創造立国推進調査会長)、「住宅基本法(仮称)については06年の通常国会での制定をめざしている。住宅政策として、高質で防犯や防災にも配慮した住宅を増やしていきたい」(山崎力国土交通部会長)、「住宅問題を念頭に置き、消費税問題を考えたい」(津島税制調査会長)などと応えた。

また、自民党の中馬弘毅地方行政調査会長は、地方分権推進について、財源の移譲や受け皿となる自治体の合併を推進していることを説明。保利耕輔文教制度調査会長は、教育基本法の改正について、連立与党内の調整を経て、現在、文部科学省が原案を作成中であることを紹介した上で、義務教育の国庫負担の問題については、中央教育審議会で検討し、秋までに結論を得ることとなっていると説明した。

額賀福志郎安全保障調査会長は、昨年12月に策定された新防衛計画の大綱では、テロや大量破壊兵器の拡散などの新しい脅威への対応に防衛力整備の重点が移っていることを紹介した上で、日米共同で弾道ミサイル防衛の研究を進めるため武器輸出三原則の緩和を決定したと発言した。

【社会本部政治担当】
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