日本経団連タイムス No.2763 (2005年4月14日)

タクシン首相と日タイ経済連携協定で懇談

−安居・日タイ貿易経済委員長が訪タイ/日本経団連などが締結を求める要望書の趣旨を説明


日タイ貿易経済委員会の安居祥策委員長は7日、タイ・バンコクを訪問し、同国のタクシン首相と、現在交渉の大詰めを迎えつつある日タイ経済連携協定に関し懇談した。
安居委員長は、1日に日タイ貿易経済委員会が、電子情報技術産業協会、日本自動車工業会、日本自動車部品工業会、日本鉄鋼連盟、日本貿易会とともに取りまとめた要望書「高度かつ包括的な日タイ経済連携協定の締結を求める」(全文別掲)の趣旨をタクシン首相に伝え、「タイは日本にとって最も重要なパートナーであり、アセアンのリーダーでもある。他国のモデルとなるような高いレベルの合意が、できるだけ早期にまとまることを期待している。特に、わが国経済界の関心の強い、鉄鋼、自動車、および自動車部品の関税問題、ならびに投資・サービスの分野でWIN―WINの関係を築くことができるようタイ側にも配慮をいただきたい」と述べた。

タクシン首相、早期合意へ意欲示す

これに対し、タクシン首相は、「タイ政府は国全体の利益を考えており、一部の利益を保護することはない。経団連の懸念は承知しており、1つの国が勝者となり、もう一方が敗者となることはない。私の理解では、問題も話し合いで解決が可能であると思っており、もう1ラウンドあれば交渉は終了すると思う。その際には、小泉総理にタイに来ていただいても、自分が日本に行ってもよい」と安居委員長の発言に理解を示しつつ、早期合意に強い意欲を示した。

タイ訪問に先立ち、安居委員長は1日、連名団体の代表者とともに、細田博之内閣官房長官、町村信孝外務大臣を訪問し、要望書を建議した。
要望書では、(1)東アジアの経済連携の規範となり得る高度で包括的な日タイ経済連携協定(EPA)の早期締結 (2)鉄鋼や自動車、自動車部品、電気・電子部品の関税撤廃確保 (3)投資・サービス分野の自由化とルール整備などの確保――について政府間で粘り強く交渉するよう求めている。
建議後記者会見を行った安居委員長は、「引き続き関係閣僚が協力しながら、がんばっていきたい」(細田官房長官)、「できるだけレベルの高い合意ができることが大切だと考えている」(町村外相)との回答を得たことを紹介。「何とか早く、かつレベルの高いEPA協定を締結していただきたい」と語った。

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高度かつ包括的な日タイ経済連携協定の締結を求める

2005年4月1日
日タイ貿易経済委員会
(社)電子情報技術産業協会
(社)日本自動車工業会
(社)日本自動車部品工業会
(社)日本鉄鋼連盟
(社)日本貿易会


わが国経済界は、真に日タイ両国経済の発展と協力拡大の基盤となるとともに、東アジアにおける経済連携の模範となりうる、高度かつ包括的な日タイ経済連携協定が早期に締結されることを強く求める。

すなわち、両国は、WTO整合的な経済連携協定を実現することはもとより、より高いレベルの貿易自由化を達成すべきである。特に、鉄鋼、自動車、自動車部品、電気・電子部品等我が国の主要輸出品目について、早期の関税撤廃の確保が必要不可欠であり、これらは両国の産業基盤の強化と国際競争力の向上に資するものである。

また、日タイ両国における更なる自由かつ円滑な事業活動の基盤を確立すべく、投資・サービス分野においても、他国との投資協定等に劣ることのない、十分な自由化とルール整備等が確保されるべきである。

経済界としては、日タイ経済連携協定の早期合意を望むとともに、これらの内容が確保されることが、本協定の締結を意義あるものとする上で極めて重要であると考えており、質の高い内容が合意できるよう、粘り強く政府間交渉に当たられることを切望する。

【国際協力本部経済連携担当】
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