厚生労働省は3月25日、「労災保険率の設定に関する基本方針」を公表した。
労災保険率は、公労使三者で構成される労働政策審議会での審議を経た上で3年ごとに改定されている。今回の基本方針に基づき、今年4月から全業種における労働災害発生状況や、労災保険収支状況などを踏まえた改定作業がスタートし、秋口以降に審議会で労働保険徴収法施行規則改正案の審議を行った上で、2006年4月から新しい労災保険率が適用される予定。
日本経団連は3月11日開催の労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会において、使用者側委員を通じ、基本方針(案)について、(1)労働福祉事業の効率化・圧縮化の観点から、1989年以来続いてきた「全業種一律1.5厘」という目安を見直す (2)労働災害防止のインセンティブ促進の観点から、メリット制の増減幅を拡大する――の2点を主張した。
これらの使用者側意見は基本方針に盛り込まれなかったため、日本経団連としては使用者側委員を通じて、今後ともこの点を厚生労働省に対して粘り強く主張していく。
労災保険率は、業種別に設定する。
労災保険の業種区分は、労働災害防止インセンティブを有効に機能させるという観点から、作業態様や災害の種類の類似性のある業種グループ等に着目し、当該グループごとの災害率を勘案して分類する。
労災保険率は、原則として3年ごとに改定する。
労災保険率は、次に掲げる方式により算定する。
算定の基礎は、過去3年間の保険給付実績等に基づいて算定する料率設定期間における保険給付費等に要する費用の予想額とする。
業務災害分の料率については、短期給付分、長期給付分に分けて、各々、次の方式により算定する。
給付等に要する費用のうち、以下に掲げる部分については、全業種一律賦課により算定する。
業務災害分
非業務災害分等
算定された数値が増加した場合に、これに対応して労災保険率が一挙に引き上がる業種の労災保険率については、必要に応じて一定の激変緩和措置を講ずる。
さらに、産業構造の変化に伴って事業場数、労働者数の激減が生じたため、保険の収支状況が著しく悪化している業種の労災保険率については、必要に応じて一定の上限を設ける。
これらの具体的な措置については、料率改定時において、過去3年間の数理計算も踏まえて設定する。
なお、激変緩和措置等を講ずることにより財政的な影響が出る場合には、その必要な所要額については、全業種一律賦課とする。
労災保険率は、労災保険率の改定に係る基礎資料を公開するとともに、これに基づく審議会での検討を経て決定する。