日本経団連タイムス No.2763 (2005年4月14日)

「今後の労働契約法制のあり方に関する研究会」が中間報告

−日本経団連、経営側の意見取りまとめへ


採用や出向・転籍、解雇など労働契約全般のルールを検討している学識経験者による厚生労働省の「今後の労働契約法制のあり方に関する研究会」(座長=菅野和夫・明治大学法科大学院教授)は6日、中間報告をとりまとめた。

厚労省がこうした検討を進めている背景には、バブル崩壊後、労働条件の引き下げをめぐる労使の紛争が増加しているという状況がある。経営環境の急激な変化に対応するため、企業は迅速に労働条件を変更する必要がある。他方で、個々の労働者の権利意識は高まっているが、労働組合の組織率は低下し、労働条件変更に労働者の意思が反映されにくくなっており、これが紛争増加の原因となっている。
こうした紛争を防止するためには、労使が自主的に契約を決められることに加え、公正で透明なルールが必要であるが、現在、労働契約に関する一般的なルールを定める法律は存在しない。就業規則による変更や配転などは、主に個別事案の判例のルールに基づいており、事件が起こってみないと結論がわからないことが多い。そこで、予測可能性を高めるため、労働基準法とは別に労働契約法制をつくろうというのが、同研究会のねらいである。

今回の中間報告では、労働契約法制が労使の自主的な決定を促進するものであることから、違反などに対しては、労働基準法のような行政の監督指導を行わず、裁判による履行確保が適当としている。
また、労働組合の組織率が低下するとともに、過半数代表者という1人の代表者が、多様化する労働者の利益を代表することが難しくなっているため、労働条件について、労働者が集団で、かつ対等な立場で使用者と交渉を行えるように、労使委員会を法律でつくることを提案している。
さらに、就業規則による一方的な労働条件の不利益変更についても、合理的なものであれば許されるという判例(秋北バス事件)が評価されていることから、これを法律で明らかにすることを提案。その際、過半数組合の合意や労使委員会委員の多数の決議があった場合には、合理性が推定されることも検討する、としている。
なお中間報告には、解雇をめぐるトラブルで労働者の職場復帰が難しくなった場合に、企業が金銭を支払って解決する制度も盛り込まれている。これは、先の労働基準法改正の際に日本経団連が主張した制度だが、解決金の額をいくらにするか等で労使が合意に達せず、先送りになっていた。
中間報告では、解決金は個別企業の労使間で合意した基準によるとする方向での検討が適当、としている。

同研究会の最終報告書は2005年秋を目途にまとめられ、厚生労働省の審議会(労働政策審議会労働条件分科会)で議論を重ねた後、早くて07年の通常国会に法案が提出される見通しである。

日本経団連では27日、労働法規委員会(藤田弘道委員長)を開催し、厚生労働省監督課長から中間報告の説明を受け、労働契約法制に対する経営側の意見取りまとめに向け、具体的な検討を開始する。

【労働法制本部労働法制担当】
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