日本経団連タイムス No.2764 (2005年4月21日)

さらなる行政改革推進で提言

−抜本的国家公務員制度改革へ具体的施策を提案/内閣機能の強化なども


日本経団連(奥田碩会長)は19日、「さらなる行政改革の推進に向けて」<PDF>と題する提言を取りまとめた。公表にあたって、行政改革推進委員長を務める出井伸之副会長が記者会見を行い、「昨年のワールド・エコノミック・フォーラムの国際競争力ランキングでは、日本は総合9位だが、市場への政府の適切な政策という評価項目は54位と低迷している。政府は官から民へという方針を掲げているが、今の公務員制度のままで経済の活性化が図れるのか」と述べ、取りまとめの背後にある問題意識などについて語った。

提言は主として「行政改革の必要性」と「国家公務員制度改革に関する基本的考え方」から構成されている。日本の競争力の維持・向上にとっては、さらなる行政改革が不可欠である点を強調するとともに、行政運営の基盤である国家公務員制度の改革について、企業経営者の視点から、具体的な施策を提案している。

「行政改革の必要性」では、グローバル化の急速な進展に伴い、国家としての競争力の維持・向上を図るための戦略的な政策の企画・立案が求められる中、(1)縦割り行政の弊害が目立ち機能不全を引き起こしている (2)硬直的な公務員制度がネックとなって、行政のスリム化・効率化や、大胆な再編がなされにくい――といった問題があることから、環境変化に応じたスピード感のある改革や政策が実現できない点を指摘。
日本経済が、引き続き活力を維持していくためには、民間の経済活動に対する国の関与を大幅に縮減すると同時に、“Provide and Protect Competition”(健全な競争環境の導入・維持と競争を促進するルール整備)に徹することが経済分野における行政の基本的役割であるとして、事前チェック型から事後チェック型行政への転換を求めている。
その上で、行政システムを支える国家公務員制度の抜本的な改革や、内閣機能の強化、行政のマネジメントサイクルの適正化といった3つの課題に取り組むことが急務であり、抜本的な改革を迅速かつ継続的に推進し、国家としての競争力を高めていく必要があると主張している。

「国家公務員制度改革に関する基本的考え方」では、これまでの政府の取り組みについて、内容面(能力等級制の導入と再就職管理の適正化を柱とする改正案だけでは不十分)や、手続面(検討のプロセスや議論の過程について国民への情報開示がほとんどなされていない)に問題があったと指摘。
その上で、(1)わが国全体の人材資源の最適配分をめざすための官民間のイコールフッティングの実現 (2)縦割り行政の弊害排除 (3)公務への競争原理の導入による公務部門の活性化――という視点から、7つの具体的な改革施策を提示している。
また、現在、政府が進めている人事に関する評価制度の確立や、経済財政諮問会議が精力的に取り組んでいる公務員の総人件費の抑制などについて、速やかに改革の実をあげるべきと指摘。その上で、抜本的な改革を進めるための体制整備について触れ、当事者たる政府・労働組合、さらには、労働界、経済界の代表者から構成される独立した勧告権を有する権威ある検討機関の早期設置を求めた。
さらに地方行革の推進について、地方公務員の給与や諸手当の徹底開示など、政府が先に示した「新地方行革指針」の前倒し実施に向けた積極的な取り組みを行うべきであるとしている。

【産業本部行革担当】
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