日本経団連タイムス No.2766 (2005年5月12日)

権利処理基盤整備とライブ・エンターテインメント振興強化が重要

−産業問題委エンターテインメント・コンテンツ産業部会で意見交換


産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会(依田巽部会長)は4月25日、「デジタル時代の著作権協議会」(CCD)の菅原瑞夫・著作権ビジネス研究会主査と、飯田尚一・オープンプロジェクト座長を迎え、CCDが4月に取りまとめた報告書『コンテンツ流通の促進に必要となる権利情報の共有に向けた環境整備のあり方』の概要について説明を聴くとともに、エンターテインメント・コンテンツ産業部会21世紀型ライブ・エンタテインメント・ビジネス研究分科会の矢内廣座長から、3月に取りまとめた報告書『ライブエンタテインメント産業の振興に向けて』の概要について報告を聴き、意見を交換した。

まず、CCDの活動について菅原主査が説明。CCDでは、著作権ビジネス研究会を設置し、ブロードバンド等デジタルネットワークにおけるコンテンツ流通の促進のため、権利情報等の構築や共有化について検討を進めていること、2004年度は、コンテンツ流通に係る幅広い関係者の参画によるオープンプロジェクトを主催し、会員団体の事例研究やアンケート調査を実施したことなどを明らかした。
推進にあたっている飯田座長は、情報共有やID(識別番号)の共通化に対し、団体・業界によって、コンテンツ流通で必要となる情報は異なるため、団体ごとの属性やニーズを踏まえた上で導入することが重要と強調、各当事者が主体的に情報整備を進める必要があると指摘した。また、実際のコンテンツ流通の中での権利情報共有化とID活用を促進していくために、今後は会員団体から要請のあるコンテンツIDの検討と、各団体の活動の支援を積極的に進めていくと語った。
2004年度の事業の成果については、菅原主査が報告。ID体系を無理に標準化するのではなく、各団体等が用いている既存のID体系を活用することで、IDの共通化が実現できることを改めて確認できたと述べ、これまでの取り組みをさらに発展させていきたいとの考えを示すとともに、将来的には、CCDの取り組みとコンテンツ・データベースをリンクさせることの重要性を示唆した。

続いて、ライブ・エンターテインメント産業の振興について、矢内座長が説明した。座長はライブ・エンターテインメント産業が、21世紀の主力産業の1つとなり得るとの見解を示したほか、同産業の振興に向け、官民一体となった取り組みが必要であることを強調した。その上で、(1)ライブ・エンターテインメント集積特区の設定、各種規制緩和等による集積地化の促進 (2)税制改革や知的財産権の適正な保護等の法整備、人材育成等によるビジネス基盤の近代化 (3)シアターカレンダーの配布や小中高生への鑑賞教育、シーズン・チケット・ビジネスの導入等によるプロモーション環境の整備――といった具体的な施策を提言した。

意見交換では、依田部会長が、コンテンツの2次利用促進に向けたコンテンツ情報提供基盤整備や、ライブ・エンターテインメントの振興を政府に求めていることを報告。さらに、3月31日の知的財産戦略本部コンテンツ専門調査会や、4月7日に行った日本経団連と民主党首脳との会合、4月21日の自民党コンテンツ産業振興議員連盟の会合などの場でも、これらを強調したことを紹介し、同課題への取り組みに対する意欲を示した。

【産業本部産業基盤担当】
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