日本経団連タイムス No.2769 (2005年6月2日)

シンポジウム「知的財産高等裁判所に期待する」開催

−日本経団連会員企業らが参加


日本経団連は5月13日、日本知的財産協会と財団法人バイオインダストリー協会との共催で、「知的財産高等裁判所に期待する」をテーマに、東京・大手町の経団連会館でシンポジウムを開催した。日本経団連ではかねてより、知財立国実現の観点から知財高裁の創設を政府に訴えてきたところ、こうした産業界の要望を受け、今年4月1日、知財高裁が創設となった。同シンポジウムは、知財高裁の創設を記念して開催され、日本経団連の会員企業や関係団体から約150名が参加した。

シンポジウムの冒頭、主催者を代表して日本経団連の庄山悦彦副会長(産業技術委員長)があいさつし、「数年前には、考えられなかった改革が実現し、関係の方々の努力に御礼を申しあげる」と述べた。

続いて3名の来賓があいさつ。まず保岡興治衆議院議員・司法改革推進議員連盟会長が、知財高裁の設立は、知財立国の実現に向けた最大の成果と評価した上で、「(知的財産における)世界一の裁判所をつくる意気込みで取り組むべき」と激励した。次に、荒井寿光内閣官房知的財産戦略推進事務局長が、「日本の裁判所のモデルになるような裁判所となり、さらには、国際契約の管轄が知財高裁になるような裁判所をめざすべき」と、同裁判所の今後の方向性について強い期待感を示した。篠原勝美知的財産高等裁判所長は、関係各方面からの激励に対し、「身の引き締まる思い」と述べた上で、「迅速性や専門性の高さの確保、5人合議制を活用したルールメーキングに努めたい」と産業界のニーズや関係各所からの期待に応えていく姿勢を明らかにした。

また、大竹昭彦最高裁判所事務総局行政局第一課長からは、知財高裁の創設について、知財関係事件の取り扱いや知財高裁の組織概要など、知財関係の制度改正の主な内容を中心に報告があった。

その後行われたパネルディスカッションでは、久慈直登日本知的財産協会理事長・本田技研工業知的財産部長、杉崎宏光味の素理事・知的財産センター長、竹田稔弁護士、渡部俊也東京大学先端科学技術研究センター教授の4名が出席、加藤幹之日本経団連産業技術委員会知的財産部会部会長代行がモデレーターをつとめた。知財高裁への期待という視点で議論が進み、「知財高裁は、世界有数の知的財産裁判所であり、運用に力を入れて、世界の模範となる知財判決を発信すべき」「ユーザーの信頼を獲得することで、国際的な紛争において、ホームである日本の裁判所を活用したいというニーズに応えて欲しい」「裁判官には、技術的事項を的確に判断できる専門性と、妥当な判断を行う見識の双方が必要である」「ダブルメジャー型の人材を育てるために、理系人材が法曹資格を得て、裁判官になっていくキャリアビジョンが必要」――など、さまざまな課題や意見が披露された。

最後に、共催団体であるバイオインダストリー協会の地崎修専務理事が閉会挨拶し、「産業界も知財高裁をしっかり活用し、世界に冠たる知財立国の実現をめざしたい」と決意を示した。

【環境・技術本部開発担当】
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