日本経団連タイムス No.2770 (2005年6月9日)

産業問題委エンターテインメント・コンテンツ関係者連携に関する懇談会

−携帯端末の将来像、通信会社から聴取/日常生活での活用へ検討


日本経団連の産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ関係者連携に関する懇談会(座長=岡村正・産業問題委員長)は5月25日、東京・大手町の経団連会館で第3回会合を開催した。

会合では、「エンドユーザーのニーズの変化を見据えたメディア・端末利用の将来像」について、KDDIの小野寺正社長とNTTドコモの榎啓一常務取締役から通信キャリアの立場での説明を聴取し、意見交換を行った。

まず、KDDIの小野寺氏が、他業種とのコラボレーションにより成功したビジネスモデルとして、レコードメーカーや機器メーカーと協力した「着うた」サービスについて紹介。市場環境の整備が、楽曲供給の充実やユーザーの増大をもたらしたことに言及し、プラットフォーム整備の必要性を指摘した。さらに、FM携帯端末については、音楽原盤並みの受信音質をめざすハード側と、原盤の売り上げを維持したいソフト側との調整を例に挙げて、ソフトとハードの間で利益を調整しつつ、自らもプラスとなる「全体最適」をめざすことが、通信キャリアにとって重要との考えを明らかにした。
また、携帯電話の将来像について小野寺氏は、「他のメディアとの相互連携が一層進むだろう」と述べ、パソコンやテレビ番組をきっかけに携帯電話で商品を購入することが可能になるなど、生活に密着している強みを活かした方向性に期待感を示した。一方、通信と放送の連携には解決すべき法的課題があると指摘した。

続いて、NTTドコモの榎氏はiモードサービスの展開について説明。携帯コンテンツビジネスの成功のポイントには、(1)簡便確実な課金システム (2)複製の困難性――があったと指摘。そのうえ、インターネット接続によりパソコンと同じサイトに接続できるという利点が、iモード市場の拡大に貢献したと述べ、サービスにおけるコンテンツの重要性を強調した。
また、日本でのiモードの普及には、女子高生に代表されるコンシューマー・マーケットの存在が大きかったとの考えを示したほか、今後はiモードのビジネスモデルの海外輸出や、「おサイフケータイ」のように日常生活のさまざまな場面で携帯端末が活用される環境づくりに力を注ぎたいというビジョンを明らかにした。
さらに小野寺氏と榎氏ともに、ユーザーの利便性向上とコンテンツ保護との調整の観点から、端末故障時に限ってはユーザーが購入したコンテンツのバックアップを通信会社が行えるよう要望した。

意見交換では、メンバーからの携帯電話における映画やテレビ視聴の可能性についての質問に対し、「視聴者のニーズや課金方法など、ビジネスモデルについての課題は残るが、コンテンツ紹介の窓口としては有望である」とした。これに対し、非常時には有効な情報入手手段となる点も考慮すべきとの意見が出された。

今後同懇談会では、中長期的な視点で、ユビキタス社会において新たなビジネスモデルを構築するための検討を重ねるとともに、具体的な課題については適宜ワーキンググループを設け、議論することとしている。

【産業本部産業基盤担当】
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