日本経団連タイムス No.2771 (2005年6月16日)

関西会員懇談会開く

−「新しい成長の基盤を創る」テーマに


日本経団連(奥田碩会長)は8日、大阪市内で関西会員懇談会を開催した。「新しい成長の基盤を創る」を基本テーマとした今回の懇談会には、奥田会長や御手洗冨士夫副会長、柴田昌治副会長、三木繁光副会長、宮原賢次副会長、岡村正副会長はじめ、関西地区会員ら約250名が参加。日本経団連の活動報告のほか、関西経済の活性化や地球温暖化防止対策、人材育成などについて意見を交換した。

奥田会長、人を活かす社会づくり強調

冒頭あいさつで奥田会長は、「新しい成長の基盤を創る」には、引き続き構造改革に取り組むことを通じて、企業の力を引き出し、国を支える産業をつくり、人を活かす社会をつくる必要があることを強調。具体的には超高齢社会の到来や少子化の進行に歯止めがかからない状況から、まず税制や財政、社会保障制度の一体的改革を急ぐことが不可欠であると述べた。
また、地球規模の競争が激化する中で日本のめざすべき方向は、「科学技術創造立国」「環境立国」「観光立国」の3つであると指摘。このうち「環境立国」については、環境税や規制的な施策でなく、国民や企業の自主的取り組みを尊重した対策を取るべきとの考えを示した。国際関係については、特に中国や韓国など東アジア諸国との友好関係を長期的に発展させるという大局を見失わないようにすることが肝要と述べた。
最後に奥田会長は、企業倫理の徹底について触れ、企業不祥事は経済界全体に対する信頼を損ねかねない大問題であると警鐘を鳴らし、経営者が率先して行動し、企業倫理の確立に努めるよう呼びかけた。

続いて、5月の定時総会で選任された岡村副会長が新任あいさつを行った後、御手洗副会長、宮原副会長、岡村副会長が、日本経団連の活動を報告した。

■活動報告

御手洗副会長は、企業買収防衛策の整備に関連して、国会で審議されている会社法案が早期に成立するよう、引き続き働きかけていくと述べるとともに、4月に成立した改正独占禁止法の附則で、2年以内の抜本改正が決められたことに触れ、引き続き課徴金制度や審判手続きのあり方について、経済界の要望に沿った改革を推進すべく関係方面に働きかけていくと語った。

経済連携協定(EPA)への取り組みについて宮原副会長は、アジア諸国との包括的で高度なEPAの早期締結や東アジア自由経済圏の構築に努めていく考えを示した上で、当面の課題として、タイ、韓国とのEPA交渉促進を挙げた。

岡村副会長は、日本のコンテンツ産業の新しい成長の基盤づくりの一環としてのソフト・ハード両分野の連携に向けた取り組みについて説明。「エンターテインメント・コンテンツ関係者連携に関する懇談会」を設置し、業界横断的な相互理解を深めるとともに、権利者の保護を図りながらエンドユーザーのニーズに応える新しいビジネスモデルづくりを検討していることを紹介した。

■意見交換

意見交換では、関西地区会員の竹中統一・竹中工務店社長、望月志郎・大阪製鐵社長、松尾博人・クラレ会長、伊藤正視・伊藤ハム社長、広岡良彦・住友精化相談役が発言。

関西の都市活性化については、各都市の機能を戦略的に整備する必要があり、その基本には人が住み、集まるにふさわしい環境の整備があるとし、その重要なファクターとして都市の景観形成を挙げた。その上で、景観の向上への意識が国民の間に定着するよう、日本経団連としても働きかけを行うよう要請した。

地球温暖化対策に関しては、(1)環境税に引き続き反対する (2)温暖化対策に米中の参加を求めていく (3)国民レベルの省エネ運動を推進する (4)原子力の有効利用を促進する――などの意見が出た。

さらに人材育成の問題については、偏狭な専門指向に陥らない複眼思考の人材育成や、大学における化学・技術教育の充実、農業体験による人づくり教育実施などの要望や提案があった。

また、BSE(牛海綿状脳症)検査を迅速に、かつ安いコストで実施できる診断チップを東京大学、東北大学と共同で開発することに成功、社会貢献、消費者サービスなどの視点から、これを利用した検査実施を米国などに対して働きかけているとの報告があった。

このうち地球温暖化対策について柴田副会長は日本経団連として、経団連環境自主行動計画の推進や民生・運輸部門のCO排出削減努力強化の呼びかけ、国民運動の推進、環境税導入の断固阻止、原子力重視政策に一層取り組んでいくとコメント。人材育成問題については三木副会長が、均質な人材育成を目標とする教育からの脱却、理数系教育の重視、国際的コミュニケーションを高める教育の実施が必要と述べ、これらを達成するために教育の枠組みを、多様性、競争、評価の3つを基本に見直すべきであるとの考えを示した。また企業に関しては、社内教育の強化やインターンシップ制度への協力促進などの重要性を指摘した。

最後に総括した奥田会長は、景観向上や地球温暖化対策、天然資源の安定的確保、税制改正、M&A対策、教育改革、教育への企業の協力などに積極的に取り組んでいきたいと述べるとともに、関西経済の再生に言及。関西の活性化のキーポイントは、付加価値をもたらす企業や人材の、関西からの流出防止にあると語った。

【総務本部総務担当】
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