日本経団連タイムス No.2775 (2005年7月14日)

「日本経団連人事・労務管理者大会 愛知大会」開く

−「人材力」を最大限に発揮する人事戦略探る


日本経団連は7、8の両日、名古屋市内のホテルで「第107回日本経団連人事・労務管理者大会愛知大会」(中部経営者協会、愛知県経営者協会と共催)を開催した。「組織活力を生む、企業変革へのシナリオ〜『攻めのリストラ』へ向けて人事が果たす役割〜」を総合テーマに行った同大会には、全国から約500名の人事・労務担当者らが出席し、自社における「人材力」を最大限活かし、活力ある組織作りを行うための人事戦略などについて探った。

大会冒頭、岡部弘・愛知県経営者協会会長は、「中部地方は今年、中部国際空港の開港や愛・地球博の開催、それに伴う高速道路網の整備によって大きく開かれ、経済・産業が活気にあふれている」とあいさつ。その一方で、企業経営の先行きを楽観視できない要因も多いとの懸念を示した上で、企業がさらなる成長に向け変革するために、企業が有する「人材力」を最大限に発揮することができる人事戦略が必要であると述べた。

続いて、張富士夫・日本経団連副会長が「志を持って新たな未来を切り拓く」をテーマに基調講演を行った。この中で張副会長は、トヨタ自動車創業当時から多くの諸先輩が情熱を込めて車作りに邁進してきたことを披露し、今もなおその情熱は志として引き継がれ、ただ利益をめざすのではなく、自動車を通して豊かな社会づくりをめざすことに社員が考えを一としていることを紹介した。さらに、産業の未来は、社会を便利にしていくところにあると述べた上で、企業が社会的責任を果たし、地域の発展のため社会貢献を行うことの重要性を指摘した。また、自動車産業は現在も成長産業であることを強調する一方、今までとは違う視点で発展を考える必要があると言及。具体的には、ハイブリッド技術や安全技術を進化させ、地球温暖化や交通事故の問題を克服し、自動車の利便性をより追求すること、またそれぞれの国の顧客の声をいかに製品に反映できるかがポイントになると語った。人材教育については、「若手にはチャンスを与えることが重要」と指摘。職場でのローテーションも有効だが、プロジェクト参加などの武者修行は本人が大きく成長するほか、その経験やその時の人脈はその後、会社にとっても大きな力になりうるとの考えを示した。

次に「組織の強さと人材マネジメント」と題して講演した守島基博・一橋大学教授は、人材マネジメントのミッションは組織を強くすることにあると強調。今後企業が自律・分散・協調型組織に移行していく中で、人材マネジメント部門はその組織を強くするために、「自らがビジョンを描けて、現場の人間を育成し活用ができる優秀な現場リーダー」を継続的に供給することが重要であると述べた。また、GEの事例を挙げ、リーダーは短期的な「業績」よりも「リーダーシップ」を重視して評価する方が重要で、リーダー育成手段としても効果的であるとの考えを示した。

「企業変革のために人事が果たす役割」をテーマとしたパネル討論には、伊藤保徳・河村電器産業副社長、加藤雅裕・デンソー調達副部長、川口公高・ベネッセコーポレーション人財部長がパネリストとして参加。変革期の人事戦略の方向や人材育成の難しさなどを語った。コーディネーターを務めた関島康雄・日立総合経営研究所社長は、「変革期には現在必要な人材と将来必要になる人材は違ってくることを認識すべき。長期的なコアコンピタンス実現には将来に向けての『人材ポートフォリオ』を組むことが重要」と総括した。

大会ではこのほか、愛・地球博で愛知県パビリオン総合プロデューサーを務める、ノンフィクション作家の山根一眞氏が「愛知万博と環業革命」、西山昭彦・東京ガス・西山経営研究所所長が「企業内プロフェッショナルの時代」、精神科医の和田秀樹氏が「部下のやる気を2倍にする法」と題し講演した。

【出版・研修事業本部研修担当】
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