日本経団連タイムス No.2779 (2005年8月11日)

宇宙開発利用推進会議が総会開催

−宇宙の産業化、利用促進の環境整備など05年度事業計画を承認


日本経団連の宇宙開発利用推進会議(谷口一郎会長)は7月27日、東京・大手町の経団連会館において総会を開催した。総会では、2004年度の事業報告と収支決算、ならびに2005年度の事業計画と収支予算について審議し、承認したほか、役員の一部改選についても審議を行い、谷口会長および佃和夫副会長が再任した。その後、ノンフィクション作家の山根一眞氏の講演を聴取した。

04年度の事業報告ではまず、宇宙開発利用の推進に向けた04年度の取り組みとして、(1)宇宙開発利用の早期再開と着実な推進に向けた要望提出、(2)05年度宇宙開発関係予算への対応、(3)第3期科学技術基本計画に対する対応、(4)準天頂衛星システムの推進――の4つを挙げた。

具体的には、日本における宇宙開発利用を取り巻く厳しい環境の打開に向けて、04年6月に、提言「宇宙開発利用の早期再開と着実な推進を望む」04年7月8日号既報)と題する意見書を発表し、建議したほか、国策として宇宙開発利用を着実に進めるための必要な予算措置が講じられるよう、05年度予算編成に際して関係方面へ働きかけを行ったことを説明。

さらに、第3期科学技術基本計画(06年度〜08年度)において、宇宙開発利用が国としての政策目標に不可欠な重要技術として明確に位置付けられることをめざし、05年3月に「宇宙開発利用推進に向けた第3期科学技術基本計画に対する要望」をとりまとめ提案したこと、また準天頂衛星システムの推進に関しては、情報の提供や働きかけを行うとともに、「自民党の測位・地理情報システムに関する合同部会」(額賀福志郎座長)において、谷口会長から経済界の要望を伝えたことを報告した。

このほか、宇宙航空研究開発機構(JAXA、立川敬二理事長)の長期ビジョンに産業界の考え方が反映されるよう、本会議や同会議企画部会(廣田陽吉部会長)で、立川理事長らと意見交換したこと、また宇宙開発利用の重要性に関する啓蒙活動を行ったことを紹介。筑波大学大学院の鈴木一人専任講師や北海道大学大学院の山村悦夫教授、慶應義塾大学の青木節子教授から講演を聴取し、国内外の宇宙開発利用の動向に関し理解を深めるとともに、会報「宇宙」第53号―国の基盤(インフラ)としての宇宙―を刊行、広く配布して啓蒙活動に努めたことを強調した。

続いて、05年度事業計画についての説明を行った。今年12月の総合科学技術会議においては第3期科学技術基本計画が策定されることとなっていることから、宇宙開発利用促進の観点においても重要な局面にあることを指摘。その上で、04年の事業活動をより強化するため、「宇宙の産業化、利用促進のための環境整備」「国際交流」「広報・調査」の3つを柱とすることを報告した。

具体的内容としてはまず、宇宙の産業化、利用促進のための環境整備について、(1)06年度宇宙開発関係予算編成に向け、関係方面へ働きかける、(2)準天頂衛星システムに関し、国としての測位戦略や測位整備・運用担当機関の早期決定などに向けた働きかけを進める、(3)第3期科学技術基本計画において、宇宙開発利用が国としての政策目標に不可欠な重要技術として位置付けられるよう、関係方面に対する働きかけを継続する、(4)JAXAの産学官連携部と密接に協力し、産業界と政府・学界との連携を強化する――ことなどを盛り込んだと説明。

さらに、海外の宇宙開発関係機関・団体や、訪日関係者との意見交換を行うことや、宇宙開発利用に対する国民の理解増進を図るため、会報「宇宙」などの出版活動や内外のシンポジウムへの協力を通じて、宇宙開発・利用の社会的意義や重要性、経済社会に与える効果について広報・調査活動を実施していきたいとの考えを述べた。

最後に谷口会長は、宇宙開発利用に関する広報の重要性に言及し、「実りある活動をしていきたい」と語り、有意義な講演会の開催や、会報の刊行に意欲を示した。議事終了後には、山根一眞氏が講演。「高き『志』を抱き大宇宙へ」というテーマで、宇宙に対する熱い想いを語った。

【環境・技術本部宇宙担当】
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