日本経団連タイムス No.2780 (2005年8月25日)

アメリカ委員会セミナー開催

−「アメリカの新エネルギー安全保障政策と日本との協力」/リチャードソン・ニューメキシコ州知事が講演


日本経団連のアメリカ委員会(張富士夫委員長、鈴木邦雄共同委員長)は7月26日、東京・大手町の経団連会館でセミナーを開催し、ビル・リチャードソン・ニューメキシコ州知事から「アメリカの新エネルギー安全保障政策と日本との協力」と題する講演を聴取後、意見交換を行った。同セミナーには、アメリカ委員会メンバーら約85名が出席した。

日米の協力関係強化に期待

リチャードソン氏はまず、日々消費するエネルギーのかなりの部分を外国に依存している日米双方にとって、「エネルギー安全保障は重要な課題である」と強調。経済のさらなる成長と生活水準の一層の向上を促進するに足る十分なエネルギーを、もはや適正な価格で買える時代ではなく、価格や供給量は予測不可能に変動しており、またその資源を、不安定かつ危険な地域に依存していると述べた。その上で、環境問題にも触れ、今後は地球の大気に脅威を与えず、安定供給できるエネルギーの確保について、日米ともに模索していく必要があると語った。
特に、「運輸」分野に関しては、日米両国とも、輸送用エネルギーとして多くの石油を輸入しており、日米が協力すれば、輸入原油に対する依存度を減少させることができるだけでなく、大気汚染の原因の1つを除外できると説明。日本のハイブリッド車の技術は、ガソリンエンジンが使用されて以来、公害をもたらさない燃費改善の重要な技術開発であると評価した一方、ディーゼル技術がいかにクリーンであっても、依然として輸入原油を使うことから、最終的には国内の資源で賄える、水素燃料電池の使用が適当であるとの考えを示した。さらにリチャードソン氏は、日米両国の政府は燃料電池の研究資金を直ちに10倍にすべきであると述べたほか、日米で「知的財産連合」を作り、知財を共通資産とし、日米どちらかの政府の助成を受けた研究の成果を、両国のメーカーがロイヤリティを支払わずに活用できる仕組みなどを提案し、グローバルな協力の必要性を強調した。

また、発電に関しても言及。家電やエアコン、暖房器具、照明器具などのエネルギー効率は大幅に改善したものの、消費を下げるだけでは、エネルギー安全保障を達成できないうえ、二酸化炭素の大きな発生源でもあると指摘し、改めて新しいエネルギーの必要性を訴えた。その解決案として、(1)太陽エネルギーの研究開発 (2)原子力の役割とリスクに対する適切な評価 (3)燃料電池の研究強化――を提示。さらにニューメキシコには、強力な技術基盤や熟練労働力、素晴らしいビジネス環境があると強調して、年間300日晴天が続くニューメキシコの太陽光発電の研究施設建設や、燃料電池の生産・研究に対し、日本の政府・企業の共同協力を要望した。

最後にリチャードソン氏は、「エネルギー安全保障の確保は複雑だが、達成しなければならない」と指摘。炭化水素燃料の使用を減らし温室効果ガスの発生を減少させるといった共通のグローバルな課題には、各国の協力が不可欠であり、解決に向けた諸国のコミットメントの共有が必要であるとの認識を示した。
また、「エネルギー安全保障は、あらゆる国や国民の将来にとって重要であり、そのような観点から取り組むべき。日米が協力すれば技術的にも対応可能である」と述べ、日米の協力姿勢が一層強まることに期待感を示した。

【国際経済本部北米・オセアニア担当】
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