日本経団連タイムス No.2781 (2005年09月01日)

竹内大使が経済界と懇談

−OECDが抱える問題点、改善への方向などを述べる


日本経団連のOECD諮問委員会(本田敬吉委員長)は8月12日、東京・大手町の経団連会館で、次期OECD事務総長候補である竹内佐和子大使・外務省参与との懇談会を開催した。現OECD事務総長のジョンストン氏は来年5月に退任する旨を表明しており、次期事務総長は12月1日までに加盟各国のコンセンサスによって選出される。竹内大使は、日本を代表し次期事務総長に立候補している。この日の懇談会では、竹内大使が現在のOECDが抱えている問題点と改善の方向についての考え、すなわち立候補に際しての抱負やOECDへの期待などを述べた後、出席したOECD諮問委員会はじめ関係委員会の委員らと意見交換を行った。

竹内大使は、OECDの問題について、まず、同機関では意思決定に30カ国の大使によるコンセンサス方式が採用されているため、意思決定のスピードが遅く、企業に例えればガバナンスがしっかりと行われていない状態にあると指摘した。またOECDは、理事会を意思決定機関とし、その下で多くの専門スタッフが働いているが、各分野の縦割りや連携不足などのためにアウトプットが明確になっていないとして、最終的にOECDが誰の役に立つべきなのかをしっかりと考える必要があることを強調。OECDの知的活動が十分にフィードバックされていない点を改め、OECDのアイデンティティをいかに高めるかを真剣に議論する時期にさしかかっているとの見解を示した。
続いて竹内大使は、OECD加盟国間の地域的偏りに言及。OECD加盟30カ国中、23カ国が欧州に属し、90年代以降の世界経済の発展に大きな役割を果たした東南アジアや中国などが加盟していないことを挙げ、世界のGDPの半分以上を占める太平洋地域を抜きにOECDが活動を行うことはいまや考えられないと述べた。その上で、こうした世界経済の鍵となるアジア地域の環境、エネルギー、技術進歩などといった問題がOECDの議論に十分反映されるべきで、そうしなければOECDの国際機関としての重要性は薄れていく一方であると警告した。
同時に、OECDに似た政策的・地域的国際機関が多く存在している中で、OECDならではの役割を明らかにしていくことが必須であることを強調、事務総長に就任したあかつきには、非常に高度な専門性を持ち、潜在的能力が極めて高いOECDのスタッフの力を駆使して、他の諸機関との差別化を図るという課題に取り組んで行きたいとの意欲を示した。

次期事務総長就任へ支援要請

日本とOECDの関係について竹内大使は、OECDの予算300億円のうち、日本は毎年その約2割に当たる70億円を拠出金として支出、その他の追加的費用を合わせれば80億円を負担していることに触れ、日本と同額を負担している米国が、市場の拡大、自由化や、コーポレートガバナンスなど自国の関心の高い分野をOECDに研究させるなどしっかりとした戦略を持っていることを指摘。日本も多額の負担をしている以上、それに見合うアウトプットをOECDから得る必要があるが、日本のOECDへの期待は明確になっていないとの見方を示した。その上で日本の関心が高い分野や、関心を持つべき分野として、中国市場、エネルギー分野、コーポレートガバナンス、人材や技術力といった無形の知的財産、企業価値に関する議論などを挙げた。また「生徒の学習到達調査(PISA)」への注目度も高く、高齢化社会への対応や、人材投資のあり方をはじめとする雇用政策も重要事項であると述べた。
竹内大使は、こうした問題についての民間からの協力や参加が期待されるとするとともに、OECDは権威の象徴ではなく、経済発展に向けて上手に活用していくべき機関であるとした。また、若者世代にとっても、知的交流の場所として楽しめる場所にならなくてはならないとの考えを示し、次期事務総長就任に向けての支援を要請した。

続く質疑応答では、参加者から、竹内大使への期待、OECDへの要望などについて、多くの発言があった。
なお懇談会の最後に、竹内大使のOECD諮問委員会特別顧問への就任が諮られ、満場一致で承認された。

【国際経済本部貿易投資担当】
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