日本経団連タイムス No.2784 (2005年9月22日)

平成18年度税制改正で提言

−景気の好循環継続を主張、税財政の抜本改革訴える


日本経団連(奥田碩会長)は20日、今秋以降行われる税制改正論議に経済界の意見を反映させるべく、「平成18年度税制改正に関する提言」を取りまとめた。新政権の体制が固まった後、関係方面への働きかけを行っていくこととしている。提言の要旨は次のとおり。

研究開発・IT投資促進税制延長など

■景気の好循環の継続と税財政の抜本改革

今回の提言の基本的認識として第1に、日本経済が民間部門の改革の進展を出発点に、民間主導の景気回復、税収増、プライマリー・バランスの改善という好循環に入りつつあることを踏まえ、平成18年度改正においては、活力重視を基本的視点として取り組むことによって、こうした好循環を維持すべきだと主張している。
第2に、日本が人口減少社会に突入しつつある今が、税財政の抜本的改革を行う上でのラストチャンスであるという危機意識を強調し、国・地方を通じた歳出・歳入構造を一体的に改革して、中長期的な潜在的国民負担率を50%程度に抑制していく必要があることを訴えている。
そのために、まずは社会保障や公務員人件費、地方財政などを中心とする徹底的な歳出削減の実行を前提とした上で、与党の政権公約にも明記されている通り、平成19年度を目途に、消費税を含めた税体系の抜本的改革(消費税率は10%まで引き上げ)を行う必要があることを強く訴えている。

■企業活力向上に向けた税制改正

企業業績の改善を背景に、法人税収は急速に改善している。
平成15年度税制改正において講じられた新たな研究開発促進税制ならびにIT投資促進税制は、企業活力の向上と景気の安定的回復に重要な役割を果たしていることから、両税制の整備・拡充が重要な課題である。

■研究開発促進税制の延長

研究開発の強化は、科学技術創造立国を確立していくための生命線であり、日本の法人課税の基幹的制度として、研究開発促進税制を維持・強化していく必要がある。研究開発促進税制の一部は今年度末に適用期限を迎えるが、平成18年度改正において、その恒久化または延長を図るべきである。

■IT投資促進税制の延長

企業が、激化する国際競争の中で生き残っていくためには、IT投資をテコに全社的な経営改革、意思決定の迅速化などを行うことが求められる。
企業のIT投資が進んだ米国、韓国などに比べ、日本の企業はこれからIT投資を本格化させなければならない段階にあり、平成18年度改正において、IT投資促進税制の適用期限を延長すべきである。

■減価償却制度の改革

景気を長期安定成長軌道に確実にのせていくためには、経済成長への寄与が大きい設備投資の拡大が必要となる。そこで、日本の法人課税改革において残された分野の1つとなっている減価償却制度の抜本的改革が求められる。当面、国際的イコールフッティングの観点も踏まえ、償却可能限度額の見直しが急務である。

■環境税導入に改めて反対

京都議定書で定められた日本としての目標(温室効果ガスを1990年比マイナス6%に削減)を達成する上で、環境税は不要である。
日本経団連「環境自主行動計画」は、政府の「京都議定書目標達成改革」において「産業・エネルギー転換部門における対策の中心的役割を果たすもの」として位置付けられており、経済界としては、これを着実に推進していく。

■住宅・土地税制の充実

良質な住宅・住環境の整備に向けて、住宅ローンに加えて自己資金も税額控除の対象とする「住宅投資減税」の導入が求められる。当面、新耐震基準・環境基準を満たす住宅の建設・改修の工事費の一定割合を税額控除する措置を創設すべきである。
また、都市の再生や企業の事業構造の改革を促進するため、不動産流通課税(登録免許税・不動産取得税)の軽減措置の延長や、固定資産税の負担軽減が必要である。

■法人実効税率の引き下げ

日本の法人実効税率は、欧米主要国の水準と比べ高止まりしている。内外からの投資の促進と国際的イコールフッティング確立の観点から、法人実効税率の引き下げを断行すべきである。

【経済本部税制・会計担当】
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