日本経団連タイムス No.2785 (2005年9月29日)

「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」が最終報告を発表

−労働契約法制定求める/労働時間法制見直しにも言及


厚生労働省の「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」(座長=菅野和夫・明治大学法科大学院教授、有識者で構成)は、15日に最終報告を発表した。
この報告書は、労働契約に関する包括的なルールの整備・整理を行い、その明確化を図ることを目的として、昨年4月に設立された同研究会において、全28回にわたる議論の末に取りまとめられたもの。

報告書では、まず総論部分で、近年の就業形態・就業意識の多様化に伴う労働条件決定の個別化の進展や個別労働関係紛争の増加等を踏まえ、労使当事者が実質的に対等な立場で自主的に労働条件を決定することを促進し、紛争の未然防止を図るため、労働基準法とは別に、労働契約に関する公正かつ透明なルールを定める新たな法律として労働契約法を制定する必要があるとしている。
この労働契約法の性格は、労働契約の分野における民法の特別法と位置付けられ、労働基準法のような履行確保のための罰則は設けず、監督指導は行わないこととしている。労働契約法制の対象とする者の範囲については、労働基準法上の労働者に限らず、家事使用人など労働基準法の適用が除外されている者や請負契約・委託契約など使用従属性まではなくとも経済的従属性のある者に拡大することを検討する必要があるとしている。

また、労働組合の組織率低下に伴い、集団的な労働条件決定システムの機能が相対的に低下しているとの認識から、労使当事者間にある交渉力の格差等を是正し、労働条件の決定に多様な労働者の意思を適正に反映させることができる常設的な労使委員会制度を整備する必要性を指摘し、この労使委員会を就業規則の変更の合理性推定等に活用することを提案している。

続いて報告書では、労働契約の成立、展開、終了の各場面に関する権利義務の発生、消滅、変動の民事上の要件と効果を定めて明確化を図ることが適当として、さまざまな提言を行っている。主な内容としては、就業規則による労働条件の変更が合理的なものであれば労働者を拘束する等の判例法理の明文化、労働契約の変更に関し労働者が雇用を維持した上でその合理性を争うことを可能とする「雇用継続型契約変更制度」の導入、兼業禁止の原則無効、解雇・整理解雇に当たり使用者が講ずべき措置の指針化、解雇の実態に即した柔軟な解決と紛争の迅速処理に資する金銭解決制度の導入などである。さらに、有期労働契約について検討が行われ、試用を目的とした有期労働契約である「試行雇用契約」を法律上位置付けることなどが述べられている。

報告書は、最後に、日本経団連がかねてより主張しているホワイトカラーエグゼンプション導入などの労働時間法制の見直しに言及し、労働時間法制の見直しを行う場合には、対等な立場での労使自治を担保する労働契約法制が不可欠であるとしている。

今後は、この報告書の検討を参考として、10月から労働政策審議会労働条件分科会において労使を交えての議論が行われる予定で、早ければ2007年の通常国会への法案提出が行われることになる。
日本経団連としては、労働法規委員会(藤田弘道委員長)において検討を行い、前出の労働条件分科会等あらゆる機会を通じて使用者側意見を主張していくこととしている。

【労働法制本部労働法制担当】
Copyright © Nippon Keidanren