日本経団連タイムス No.2786 (2005年10月6日)

第2回世界情報社会サミットに向け提言

−インターネットガバナンスのあり方について産業界の意見を表明


日本経団連は9月20日、「インターネットガバナンスのあり方について―第2回世界情報社会サミット(WSIS)に向けて―」と題する提言を発表した。

インターネットに代表されるITの急激な発展に伴い、デジタルデバイドやウイルス等の新たな問題が発生している。国連は、このようなインターネットに関する諸課題について、世界中のステークホルダーによる議論を通じて解決の方策を検討するため「世界情報社会サミット」を2回に分けて主催している。2003年12月にジュネーブで開催された第1回サミットでは、情報社会の共通ビジョンについて、基本的な認識の一致をみた。今年11月にチュニスで開催される第2回サミットでは、第1回サミットでは結論の出なかった「インターネット管理」の問題を中心として議論することになっている。

インターネット管理をめぐっては、現行の米国民間非営利法人による、IPアドレスやドメインネームの管理体制に対して、民間による管理の継続を主張する日米などの国々と、ITU(国際電気通信連合)などの公的機関による管理体制に移行すべきと主張する、中国や途上国の多くとの間で対立が生じている。
インターネットはビジネスにとって不可欠のインフラとなっており、インターネットの管理のあり方を含むインターネットガバナンスは、日本の経済界にとっても重要な問題である。そこで、日本経団連では、ICC(国際商業会議)をはじめ、各国の産業界などとも連携し、サミットに向けて産業界からのメッセージを発信するために、提言を取りまとめた。

提言ではまず、めざすべき情報社会の姿を、地球規模でユビキタスネットワーク化し、誰もがITの恩恵にあずかることができ、高度なITの利活用により、継続して発展する社会としている。また、総論における基本的視点として、ITの利活用による経済発展や福利厚生の増進を、利用者の立場で考えることが重要であり、民間部門の活力を原動力として、インターネットを発展させることが適切であるとしている。また、サミットにおいては、国際社会としての対応が必要な課題について議論することが重要であり、そこでの合意に基づき、各ステークホルダーが協力して役割を果たす必要があるとしている。
一方、サミットにおける主要な議題については、次の6点の主張を行っている。

  1. デジタルデバイドの解消については、既存組織を活用して基礎インフラを整備した後、国際協調の下で人材育成およびネットワーク・インフラ整備を行うべきである。

  2. 安心、安全なネットワークの構築はネットワーク参加者全員の問題であり、協力体制が重要である。政府にはセキュリティ文化の醸成や、犯罪抑止力の強化、検挙力の向上等について、国際協力に基づいた対応が望まれる。民間はベストプラクティスの開発など、自主的な努力を継続する必要がある。

  3. インターネット資源の管理は、技術や制度を中心に考え、技術革新や環境の急変に素早く対応することができる、民間部門による管理体制を継続すべきである。

  4. 利活用のための環境整備の推進として、電子商取引ルールの整備等が必要である。

  5. サミット後も、全世界の関係者が議論する場を継続して設けるべきである。

  6. 民間部門は、インターネットガバナンス上、主要な地位を占めており、積極的な役割を果たす必要がある。

日本経団連では、今後、関係団体などと協力してサミットに働きかけを行うとともに、サミット本番においても、代表者が意見表明を行う意向である。

【産業本部情報担当】
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