日本経団連タイムス No.2787 (2005年10月13日)

ISO・SRワーキンググループ第2回総会報告

−SRの設計仕様書採択/内容に日本産業界の考え方反映


国際標準化機構(ISO)は9月26〜30日、社会的責任(SR)に関する規格策定を目的としたワーキンググループ(WG)第2回総会を、タイ・バンコクで開催した。オブザーバーの1人として出席した日本経団連・企業行動委員会/社会貢献推進委員会・社会的責任経営部会の廣瀬博部会長に、総会の模様を聞いた。

廣瀬博・社会的責任経営部会長に聞く

―まず、総会を総括していただけますか。

廣瀬 3月の第1回総会(ブラジル・サルバドール)では議事進行に混乱が見られましたが、今回の総会は民主的かつ効率的な運営がなされました。内容についても、懸案であったSRの設計仕様書(デザイン・スペシフィケーション、規格を策定する際の前提条件等を定めたもの)が無事採択されたのに加え、その内容は、日本産業界の考え方を概ね反映するものとなりました。今回はタイと日本の共同開催であったのですが、成功裏に終わり、両国は高い評価を得ました。

―日本産業界の主張はどのように反映されましたか。

廣瀬 日本産業界がコストの面で特に懸念していた、第三者認証に繋がりかねないマネジメントシステム規格(MSS)的アプローチについては、「適合性評価(第三者認証)を目的としない」「MSSとしない」との前提条件が、設計仕様書に盛り込まれました。これは大きな成果と言えます。また、実用的なガイダンスとするため実践の例示を含むこと、すべての組織を対象とするガイダンスとすること、などの点においても日本の主張が受け容れられました。

産業界エキスパートが活躍

―日本産業界の意向が反映された背景は何ですか。

廣瀬 産業界エキスパートの貢献に尽きます。特に、総勢17名の日本代表団の団長を務められたオムロンの深田静夫氏は、設計仕様書の役割に関する発言などで主導的な役割を果たされました。また、各国産業界との連携を通じた戦略的な対応で、日本産業界の意向の反映に大いに貢献していただきました。もちろん、エキスパートの活躍の裏に、事前作業を支援して下さった部会の皆さんのご協力があることを忘れるわけにはいきません。

―総会の雰囲気はどのようなものでしたか。

廣瀬 54カ国・24国際機関から、第1回総会を上回る約350名(オブザーバー含む)の参加がありました。SRはすべての組織を対象とすることから、参加者は、産業界、政府、労働組合、消費者団体、NGO、その他と多岐にわたります。各参加者の利害関係は実にさまざまで、時に、自らの利害のみを主張する意見が出され、議論が停滞することもありました。しかし、粘り強く議論するうちに、互いを尊重しつつ前に進もうとする姿勢が共有され、総会の成功に結びつきました。

―アジアとの連携も強化されたと聞いています。

廣瀬 日本は、第1回総会に引き続いてアジア・フォーラムを開催し、10カ国55名の参加者を集めました。今回は、インドネシア、ベトナム、ミャンマーから新たに参加がありました。各国の参加者からは、日本が今後もリーダーシップを発揮していくことへの期待が示されました。もっとも期待をされるだけ、責任も大きくなったということです。

規格の内容で議論本格化へ

―今後の議論はどのように進められますか。

廣瀬 総会で設置が決まった3つの規格策定TGで、規格の内容に関する議論がいよいよ本格的に開始されます。日本産業界としては、各国産業界と連携しつつ、途上国や中小企業にも役立つ、シンプルで実用的なガイダンス作りをめざし、積極的に発言していくつもりです。なお、次回総会は2006年6月頃にリスボン(ポルトガル)で開催されます。最終的な規格策定は08年10月の予定となっています。

【社会本部企業・社会担当】
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