日本経団連タイムス No.2789 (2005年10月27日)

北陸地方経済懇談会開く/「新しい成長の基盤づくりと活力あふれる北陸の創造」テーマに

−社会資本整備や新産業・新事業創出など北陸地域の諸課題を論議


日本経団連(奥田碩会長)と北陸経済連合会(北経連、新木富士雄会長)は19日、金沢市内のホテルにおいて「第32回北陸地方経済懇談会」を開催した。同懇談会には奥田会長をはじめ、柴田昌治副会長、張富士夫副会長、岡村正副会長、三村明夫副会長、前田又兵衞政経行動委員長、高原慶一朗新産業・新事業委員会共同委員長ら日本経団連首脳が出席。また、北経連の会員企業から約160名が出席し、「新しい成長の基盤づくりと活力あふれる北陸の創造」を基本テーマに、社会資本整備や新産業・新事業の創出、地域活性化の取り組み、環境問題への対応といった北陸地域が抱える諸課題を中心に意見交換した。また、懇談会に先立って、日本経団連は、金沢市にあるボトリングシステムのトップメーカーで、技術を駆使し医療機器、半導体製造といった製品分野においても躍進している澁谷工業を視察した。

開会あいさつで北経連の新木会長はまず、北陸地域の経済動向について、「緩やかながら回復基調にある」と述べた一方、中国人民元の切り上げや昨今の原油・素材価格の高騰といった不安定要素を注視していく必要があるとの考えを示した。また、北陸地域が「環日本海交流のゲートウェイ」としての機能を果たすべく、(1)社会資本整備の促進 (2)活力にあふれる地域づくり――を軸に活動を展開していると報告。なかでも、最重要課題として実現に向け長年取り組んでいる北陸新幹線について、起工式が今年6月に高岡、金沢、福井の3市で行われたことを紹介した。さらに、「東京まで開通すれば、所要時間は大幅に短縮され、大きな経済効果が見込まれる」と期待感を表明したほか、全線開通(最終目的地は大阪)に向けた早期整備への支援を強く呼びかけた。

活動報告

活動報告では、日本経団連から、張副会長が「税制改正をめぐる動き」、岡村副会長が「コンテンツ産業の発展に向けた取り組み」、前田政経行動委員長が「政治への取り組み」について、それぞれ活動を報告した。

続いて、北経連からの報告では、まず、江守幹男副会長が説明に立ち、北陸地域の持続的な成長の前提条件としては、「社会資本整備が欠かせない」と改めて強調。(1)北陸新幹線の全線開通に向けた整備 (2)東海北陸自動車道などの高規格幹線道路の整備 (3)空港・港湾の整備――などの促進に対し、引き続き注力していきたいと報告した。

犬島伸一郎副会長は、新事業・新産業創出に向けた取り組みについて、シーズ・ニーズ・アイデアを持ち寄って事業化につなげる場として立ち上げた「北陸スーパー・テクノ・コンソーシアム(STC)事業」が今年5年目を迎え、順調に会員数を伸ばすとともに、これまでに5件の製品が事業化したことを報告。また、産官学の強力なネットワークのもと、諸活動を行っている「北陸ものづくり創生協議会」などについてもその成果を説明した。

地域活性化の取り組みを報告した深山彬常任理事は、北陸3県の広域連携強化の必要性に言及し、観光や環境分野において横断的な検討や活動を行う場として北経連が3県との間で設立した「北陸広域連携懇話会」や「北陸環境共生会議」の、さらなる充実を図りたいと語った。また、環日本海交流の促進の一環として、2000年から実施している「北陸・韓国経済交流会議」では、ビジネスチャンスセミナーの開催など活動が活発化していると報告した。

外国人観光客の誘致促進策や活力ある地域産業振興策など

自由討議

続く自由討議では、北経連側から、観光資源の豊富な北陸地域への外国人旅行者誘客促進のための戦略や、新産業・新事業創出、活力ある地域産業の振興策などについて、日本経団連の見解を求めたほか、道州制の導入については、「国からの権限委譲のあり方、財政基盤の仕組み、住民の意識など多面的に検討すべき。分権型社会を実現する上で、国と各地が真に協働する枠組みがますます重要になってくる」との意見を表明。
また、社会保障制度の改革の推進や、高度情報化社会の構築に対する日本経団連の取り組みを質問したほか、環境問題については、「企業活動の効率化と環境との調和が図られる総合的な社会システムづくりが必要」「環境税によらずとも、環境と経済は両立できる」と指摘し、北経連として改めて環境税の導入に反対する姿勢を明らかにした。

これらの発言に対し日本経団連側は、「観光客誘致には、PR活動と地域間の連携が重要であり、広域にわたる面的な取り組みが必要。北陸地域の優れた観光資源を活かすためにも、観光キャンペーンや、外国人旅行者向けの各種表示の整備などに取り組んでほしい」(柴田副会長)、「産業育成においての産学官連携は不可欠。また、アメリカの例にある、州政府を中心とした自治体によるクラスター形成支援策などは地域振興の参考になるのではないか」(高原新産業・新事業委員会共同委員長)、「三位一体改革を通じ、地方分権の推進を図るべき。道州制については将来の国を見据えた国民的な議論が必要」(岡村副会長)、「温暖化対策は、民間活力や創意工夫を活かした自主的な取り組みが基本。国際競争力の低下につながる環境税には反対」(三村副会長)、「ICT国家戦略の策定は重要な課題。ICT利活用の主役は民間であり、ICTを経営戦略の要として戦略的に活用し、地域経済の活性化につなげてもらいたい」(張副会長)――などとコメントした。

最後に総括した奥田会長は、今後の地域振興は海外情勢に目を向けることが重要になると指摘。プーチン大統領がロシア東部の開発に意欲を示していることを紹介した上で、北陸という地の利を活かし、ロシア東部などとの連携を視野に入れた戦略も考えるべきと述べ、「北海道、東北も含め、環日本海を1つの経済圏にすることも不可能ではない」と語った。
さらに、北経連の主要施策に挙げた観光振興について奥田会長は、景観の重要性が認識されていない日本の街づくりの現状を指摘し、地域住民の一人ひとりが、自分たちの足元の景観に気を配る意識の重要性を強調した。また、「点と点を結ぶのではなく、ゾーンとして考える」広域観光の取り組みを支持し、「地域の特色を生かした創意工夫で北陸の魅力を一層高めてほしい」と結んだ。

【総務本部総務担当】
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