日本経団連タイムス No.2791 (2005年11月17日)

第41回日本経団連洋上研修報告

−徹底したグループ討議と経験交流で「職場改革のビジョン」模索


10月18日に横浜港を出港した日本経団連の第41回洋上研修団(団長=鈴木正人・日本経団連常務理事)は、9日間の航海を無事に終え、10月26日、横浜港に帰港した。

今回の洋上研修では、総合テーマとして「職場改革のビジョン」を掲げ、延べ18時間以上にわたる「課題討議」や10時間以上もの「マネジメント・実務講座」受講を通じて、職場の管理者・監督者として心得ておくべきマネジメントのあり方、また、組織・人材の活性化のために必要な取り組みなどについて徹底した議論を展開した。

「課題討議」は洋上研修の中心となるプログラムで、参加者が日ごろ職場で抱えている問題意識を出し合い、それに基づいて討議グループを編成。設定した研究テーマについて“いまの姿”と“あるべき姿”を比較し、それらのギャップをなくしていくために自分たちがどのように行動すべきか、短期計画・中長期計画にわけて研究をまとめていくものである。

「会社方針の個人目標への落とし込み」を研究テーマとして設定したグループは、会社・組織の経営目標と個人の業務目標の高度なリンケージについて議論を進め、克服すべき課題を (1)組織間のコミュニケーションの充実 (2)個人のモチベーションの向上 (3)人材育成――の3点に集約。それを踏まえ、問題解決に向けた具体的な行動計画として、短期的には (1)会社・組織が従業員にどういう役割を期待するのか明確にし、それをわかりやすく説明すること (2)従業員個人が自分にどういう役割が期待されているのかをしっかりと認識し、その上で目標達成のためのシナリオづくりと定期的な目標進捗状況の確認をすること――などが必要であるとまとめた。一方、中長期的には人材育成の重要性を強調し、特にミドルマネジメント層については評価スキルとコミュニケーションスキルの向上が不可欠であるとした。

また、4人の講師による7つの「マネジメント・実務講座」では、職場において管理者・監督者に求められる責務や人材育成への取り組みを中心に講義が展開された。「やる気が生まれるメカニズム」をテーマに講演を行った中島豊・ギャップジャパン人事部長は、組織とリーダーシップの関係について触れ、「組織が活性化するか崩壊するかは上司によって決まる。活力ある組織は流動的かつ開放的であり、その変革プロセスにおいては常に“自問自答”と“自己否定”が繰り返されている」と指摘した。

上海、釜山で企業など訪問

今回の洋上研修では中国・上海と韓国・釜山に寄港した。上海では、「ダイキン工業上海有限公司」「上海凸版有限公司」「上海タイヤ&ラバー」「上海戯劇学院附属戯曲学校」の4企業・団体を訪問。なかでも現地資本企業であり、ラジアルタイヤや石油関連製品の製造販売を行っている上海タイヤ&ラバーを訪問した団員の1人は、「成長著しい中国企業の製造現場を実際に見聞し、日本の製造現場との違いや文化的な特色がよくわかった」と述べた。

「参加してよかった」96%

今回の洋上研修には94の企業・団体から192名が参加。研修修了後に実施したアンケートによると、「洋上研修に参加した印象は」との問いに対しては、「よかった」(56.0%)とする人が最も多く、以下「比較的よかった」(40.1%)、「あまりよくなかった」(3.9%)と続く。特によかった点としては、「異業種のさまざまな年齢層の人と交流できた」「日常を離れ、仕事を忘れて貴重な経験ができた」「普段、社内で相談できないことをじっくり話し合うことができた」「外国の現状を実際に見ることができ、視野が広がった」などの意見があった。
また、「洋上研修に参加して得たものは」(複数回答)との問いに対しては、「対人関係力」(88人)を挙げる人が最も多く、続いて「自己革新力」(55人)、「部下指導力」(53人)、「役割認識力」(50人)との結果であった。

【出版・研修事業本部研修担当】
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