日本経団連タイムス No.2793 (2005年12月1日)

財政制度委員会企画部会を開催

−効果的少子化対策のあり方/総合研究開発機構、神田総括主任研究員から聴取


日本経団連の財政制度委員会企画部会(大内俊昭部会長)は11月17日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、総合研究開発機構(NIRA)の神田玲子総括主任研究員から、効果的な少子化対策のあり方について説明を聴いた。

冒頭、神田総括主任研究員は少子化の進行に伴う問題点について、「人口規模の急速な縮小により、優秀な人材の絶対的な不足や国際的な発言力の低下などを招く」「人口構成が極端な逆ピラミッド型となることで、財政赤字など、将来世代への負担が増加する」――ことなどを指摘。
さらに、近年見られる急速な少子化進行の背景を分析し、(1)子育て費用負担の重さ (2)出産が不利になる経済社会システムの存在 (3)雇用不安の増大――などの要因を説明した。

一方、日本の少子化対策については、「育児に対する不安の解消に向けた施策が十分でない」と強調。具体的には、(1)保育園に通う子どもの割合が低く、育児が女性にとって大きな負担となっている (2)税制上の優遇措置・財政負担など、子どものいる家族への経済的措置が低水準である (3)大学教育などにおける私費負担が高い――ことなどを挙げた。
そこで、効果的な少子化対策としては、「多様な保育サービスの提供など、明確な基本理念を掲げることや、あわせて、男女共同参画社会の実現、子育てコストの軽減に取り組むなど、総合的な戦略を持つことが重要」「正社員と非正社員の雇用条件の格差解消、ファミリー・フレンドリーな雇用管理の実施を行うべき」「年齢に関係なく個人の生産性に見合った賃金体系への移行などにより、若年層の『結婚力』を向上させることが重要」――との見解を示すとともに、財政面の政策運営としては、(1)若年層への資源のシフト (2)集中と選択 (3)保育サービスの効率化(バウチャー制度を導入し、保育所への施設補助から個人補助へシフトするなど)――が必要との考えを述べた。

最後に神田総括主任研究員は、日本の望ましい将来シナリオに関して言及し、「第1段階として、少子化抑制戦略や人口減少適応戦略により、2015年までに合計特殊出生率を1.6に回復させる。第2段階として、2050年には、出生率を人口置換水準である2.07まで回復させることで、人口を約9000万人で安定させることができる」と締めくくった。

【経済本部経済政策担当】
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