日本経団連タイムス No.2796 (2006年1月12日)

第59回評議員会開く

−奥田会長が政治情勢などの変化指摘


日本経団連は12月22日、東京・大手町の経団連会館で「第59回評議員会」を開催、奥田碩会長、森下洋一評議員会議長はじめ、副会長、評議員会副議長、評議員ら約350名が出席した。

冒頭、森下評議員会議長が評議員を代表してあいさつ。2005年夏の衆議院総選挙の結果を受けて、政府・与党が郵政民営化法案を成立させるだけでなく改革の総仕上げに向けて、政策金融改革や三位一体改革などの重要政策を着々と進めていることを指摘し、日本経団連としては、「改革の流れを一層加速させ、徹底させるために、これまで発表してきた政策提言をさらに一歩進めて、現状をレビューしながら、具体的成果に結びつく提言を繰り返し建議していく必要がある」との考えを示した。その上で、民主導の「活力と魅力溢れる日本」の実現に向けて、奥田会長をはじめとする日本経団連執行部が、多方面にわたって強力に議論をリードしていくことを期待すると述べた。

続いてあいさつした奥田会長は、05年を回顧し、(1)衆議院総選挙で小泉改革路線が国民の支持を得て自民党が歴史的勝利をおさめるなど、政治情勢が大きく変化した(2)景気が踊り場を脱する中で日経平均株価がほぼ5年ぶりに1万5000円台を回復した(3)列車の脱線事故や幼い子どもを狙った凶悪犯罪、耐震強度偽装事件などが起こり、「社会の信頼」が揺らいできた(4)BRICsや東南アジア諸国、中東欧、中南米諸国が急速に台頭した――の4つの変化に注目すべきだと指摘。そうした潮流の変化が起こる中で「日本経済を発展に導くのは民の力にほかならない」と述べ、回復の原動力となっている企業活力をさらに活かすための環境整備を行うとともに、国民の将来不安を払拭する観点からの改革を加速させるよう、日本経団連として政治に対して訴えていく考えであることを示した。
最後に奥田会長は企業倫理の確立について言及。「経営トップは、事業活動の全責任を持つ。先頭に立ち、グローバルに通用する経営理念や行動規範を構築するとともに、自ら事業の現場に足を運び、実態に即した実践的な活動に取り組むよう」求めた。

小泉首相らが所見表明

来賓としてあいさつした小泉純一郎総理大臣は、05年を振り返り「60年ごとにめぐってくる乙酉(きのととり)年は大きな変革の起こる年」と述べ、郵政民営化の是非を焦点とした衆議院総選挙の勝利により、郵政民営化を契機として、さまざまな改革が進展したことを強調、構造改革をはじめとする政策運営への日本経団連の一層の支援を求めた。

続いて二階俊博経済産業大臣、麻生太郎外務大臣、谷垣禎一財務大臣、川崎二郎厚生労働大臣、与謝野馨内閣府特命担当大臣(金融・経済財政政策)が順にあいさつし、経済産業政策や外交、歳出・歳入一体改革、少子化対策、金融など各方面の政策課題を指摘するとともに、今後の取り組みについての所見を述べた。

「日本経済の現状と展望」福井日銀総裁が講演

次に、福井俊彦日本銀行総裁が「日本経済の現状と展望」と題して講演を行った。この中で福井総裁は当面の金融政策運営について、量的緩和政策の枠組みを継続していくとしながらも、「景気回復の持続性が高く、消費者物価上昇率も次第にプラス基調が定着していくことが展望される中、量的緩和というデフレスパイラル阻止のための異例の政策運営枠組みは、06年度にかけて変更する可能性が高まっている」という見方を示した。ただその際にも、「経済・物価情勢を十分に点検し、『消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ以上』が満たされたか確認していくことになる」と述べた上で、「解除後も、経済がバランスの取れた持続的な成長過程をたどる中にあって、物価が反応しにくい状況が続いていくのであれば、引き続き極めて緩和的な金融環境を維持していく」との考え方を示した。

【総務本部総務担当】
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