日本経団連タイムス No.2796 (2006年1月12日)

理事会開催「これからの少子化対策」

−猪口・内閣府特命担当相が講演


日本経団連は12月13日、東京・大手町の経団連会館で理事会を開催、議件の審議に先立ち、来賓として出席した猪口邦子・内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画)が「これからの少子化対策」と題して講演した。

猪口大臣は講演の中で、少子化対策としての施策を講じるに当たっては、「若い子育て世代を大切にする社会づくり」と仕事と家庭(育児)の「両立支援」という2つの視点が重要であることを指摘。前者については、80兆円を超える社会保障給付費の7割が高齢者に振り向けられているのに対し、子育てに対する支出は3.8%にとどまっている現状を紹介し、高齢者対策も重要であるが、若い子育て世代が経済的な理由で、子どもを産み、育てることを躊躇しないように配慮することも必要であるとの考えを示した。

また後者の「両立支援」に関しては、日本の場合、女性の7割が第1子出産の際に職場を辞め、再び職場に戻るときは正規社員ではなく、パートや派遣といった非正規社員となることが多いことを指摘。女性が出産や育児に伴う経済的損失を、企業における女性の育児休業取得の徹底や、子育て後の職場への「カムバック支援」などによって補填し、若い子育て世代に、仕事か家庭(育児)か、という究極の選択を迫らないで済む社会を実現したいと述べた。

さらに猪口大臣は、来るべき長寿社会とは、多様な可能性に挑戦できる社会、いろいろな生き方を両立できる社会であると定義付け、女性が仕事と家庭を両立できることもそうした社会の方向性の中で考えるべきであると述べた。

また猪口大臣は、少子化対策の実効性を上げるため、大臣自らが全国の地方ブロックを訪問し、都道府県知事や政令指定都市の長などと、少子化対策への提言や国への要望などについて議論する「大臣キャラバン」を実施することを明らかにし、理解と協力を求めた。

一方、企業が取るべき対応策として、育児休業の取得促進、職場に戻った時の短時間就労などもっぱら女性を対象にした取り組みにとどまらず、男性を含めた働き方全般の見直しにも言及し、企業のトップが若い社員の現状を理解し、「仕事と育児を両立できる温かい措置を、この機会に作るように大きな舵取りをしていただきたい」と要請した。

最後に猪口大臣は、欧米諸国のデータを示しながら、30年前と比較して、女性労働力率が高い国ほど出生率も高い傾向にあり、そうした国ほど「両立支援」が充実していると分析し、日本における「両立支援」の重要性を改めて強調した。また、第2次ベビーブームに生まれた世代が、出生力を持つのは主として今後5年間であることから、この5年間が日本の少子化対策の勝負どころであると述べた。

【総務本部総務担当】
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