日本経団連タイムス No.2796 (2006年1月12日)

小平資源エネルギー庁長官との懇談会を開催/資源・エネルギー対策委員会

−エネルギー安全保障の講演聴取


日本経団連は12月20日、小平信因資源エネルギー庁長官を来賓に招き、資源・エネルギー対策委員会(秋元勇巳委員長)を都内で開催した。
小平長官は「エネルギー安全保障」をテーマに約1時間にわたって講演し、その後、出席者と意見交換を行った。
小平長官の講演の概要は次のとおり。

(1)エネルギー安全保障への取り組み

エネルギーは、経済・産業、国民生活を支える国の基本であり、日本の安全保障に関わる問題である。エネルギー政策基本法においても、エネルギー安定供給と環境、これらを前提とした市場原理の活用という基本方針を採っている。
テロの多発やイラク戦争、自然災害などに加え、国際石油需要の逼迫から価格高騰が続くなど、21世紀に入ってから世界的にエネルギー安全保障問題が顕在化し、各国ともこれに対応してエネルギー政策を再構築している。このような中で日本のエネルギー安全保障をいかに確立するかが課題となっている。

(2)エネルギー需給の見通し

IEA(国際エネルギー機関)の見通しによると、2030年の世界のエネルギー需要は02年に比べて6割増えるが、中でも中国をはじめとするアジアの伸びが著しい。特に中国では自動車保有台数の増加に伴い、石油の需要が飛躍的に増大すると予想されており、世界市場に与える影響が懸念される。一方、日本では少子化や高齢化、省エネなどにより需要の伸びが抑えられている。結果として、市場における日本の相対的な地位の低下による価格・供給交渉への影響力低下が懸念される。

(3)各国のエネルギー政策

各国ではエネルギー政策の見直しが進んでいる。米国では、国家エネルギー政策に基づく包括エネルギー法案が05年に成立した。石油輸入依存度が高まる中、安定供給に主眼が置かれている。欧州も、従来の環境に重点を置いた政策から安全保障にも関心が集まり始めている。中国では、経済成長の最大の制約要因がエネルギーと環境であると認識されており、環境問題と省エネが政策課題となっている。ロシアでは、エネルギー資源開発に携わる企業の外資規制を行うなど、石油・天然ガス資源に対する国家の影響力が強められている。

(4)日本のエネルギー安全保障

世界的な石油高騰の中、1次エネルギー源としての石油依存度の低下、省エネの進展、備蓄の積み増しなどにより日本の状況は比較的落ち着いている。しかし、原油の中東への依存度は依然として高く、引き続きエネルギー安全保障をいかに構造的に強化するか、緊急時の対応能力をいかに高めるかという視点から取り組む必要がある。
エネルギー自給率向上に関しては、環境面からも期待が大きい準国産エネルギーである原子力を推進する。特に鍵となる原子燃料サイクルについては、昨年大きく進展し、今後も国内自給率を高めるため一層の推進を図る。
またエネルギー源の分散化、多様化を進める。省エネこそが最大の安全保障であるが、同時にビジネスベースで省エネ技術協力などを通じ、国際的な関係強化を図る。

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なお、資源・エネルギー対策委員会では今後、エネルギー安全保障を中心に、今秋のエネルギー基本計画策定に向け、産業界としての考え方をとりまとめていく予定である。

【環境・技術本部環境・エネルギー担当】
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