日本経団連タイムス No.2799 (2006年2月2日)

デミストラ国連イラク支援特別副代表と面談

−渡・中東・北アフリカ地域委員長、治安などに懸念表明


日本経団連の渡文明・中東・北アフリカ地域委員長は1月23日、東京・大手町の経団連会館でデミストラ国連イラク支援特別副代表と面談した。

渡委員長は、イラクに関する日本企業の最大の懸念として、(1)テロが頻発し治安に問題があること (2)ビジネスを行う場合どこを窓口として交渉すべきか不明なこと (3)石油・エネルギー関連の法律が未整備であること――の3点を挙げた。このうち(1)については、日本人ビジネスマンがイラクに安心して出張し、バクダッドに事務所を構えられないとビジネスは進まないこと、(2)については、石油を例にとれば、中央連邦政府、地方州政府、地方自治体政府の3者それぞれが自己主張することを指摘。(3)については、イラクの石油政策や油田開発に関する制度や、外資に対する考え方によって、日本企業のアプローチが変わってくると述べた。

これに対しデミストラ特別副代表は、石油・エネルギー関連の法律が未整備であることについては、新憲法が天然資源の扱いについて曖昧であることを指摘した上で、旧来の油田は中央連邦政府が管理し、新規油田は地域の政府が管理するため、新たに特別な関係や契約を締結する必要があるとの考えを、また交渉窓口が不明なことについては、首相、石油相、財務相、企画相などの政府要人やシーア派、スンニ派、クルド人などとも満遍なく話し合い、全方位的にコミュニケーションをとる必要があるとの見方を示した。また治安の問題に関連しては、治安回復を待つ間にも、日本企業は何らかの行動を起こすべきだとするとともに、日本政府としても、何らかのパイロットプロジェクトを実施すべきだと提案。その例として港湾管理についての、教育訓練を含めた協力の実施を挙げた。
またデミストラ特別副代表は、イラクにおける自衛隊の活躍に言及。日本が示した誠意は、イラクと日本の将来のパートナーシップに発展するだろうと述べるとともに、日本が挙げた実績を今後に結び付けることが重要と指摘。国連として、現在自衛隊が運営に協力している病院の管理などを、自衛隊撤退後は代わって継続実施していく考えであることを示した。

イラク国民の生活向上に資するため、日本は何をする必要があるかとの渡委員長の問いに対してデミストラ特別副代表は、発電所や道路などのインフラをはじめ、エアコンや冷蔵庫、テレビなどの電化製品に至るまで多くの物資が必要であると述べるとともに、現在、イラク政府は脆弱で大規模なインフラ整備プロジェクトを実施できないでいるが、将来的には可能性があると語った。

懇談を終えるに当たって渡委員長は、「日本とイラクは勤勉な国民性などで似たところがあり、相互補完の関係にある。資源国イラクに対して無資源国日本は技術を持つ。供給側のイラクと需要側の日本が相互依存型の関係を作ることが重要であるし、今後はインフラ整備などの面で協力していく道を開拓していきたい」と述べた上で、国連に対して、「日本企業は冒頭に指摘した3つの懸念を抱いており、国連としても状況が改善するように善処してほしい」と要請した。

【国際協力本部中南米・中東・アフリカ担当】
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