日本経団連タイムス No.2800 (2006年2月9日)

情報通信委員会を開催

−IT新改革戦略の説明を聴取


日本経団連の情報通信委員会(張富士夫委員長)は1月30日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。同会合では、内閣官房の伊藤元内閣参事官から、政府・IT戦略本部が1月19日に策定した、「IT新改革戦略」(以下、新戦略)についての説明を聴いた。

伊藤参事官は冒頭、日本のIT国家戦略について、これまで「e-Japan戦略」で世界最先端のIT国家をめざしてきたが、新戦略では、さらなるIT化と構造改革を社会改革の両輪とし、目標年度である2010年度にはITによる改革を完成させたいと強調。
そのため、新戦略では「構造改革による飛躍」「利用者・生活者重視」「国際貢献・国際競争力強化」を基本理念に掲げ、その下で、今後のIT政策の重点として、ITを有効に活用して、医療、環境、安全・安心、行政改革、ユビキタスネットワーク社会の構築、人材育成、研究開発、国際貢献――など、日本が直面する課題の解決を図りたいと述べた。
医療については、11年度当初までに、レセプトの完全オンライン化を実現し、それを梃子に医療の標準化を進め、国民が自分の健康情報を把握、活用できるような体制を構築したいと説明。移動・交通については、ITS(高度道路交通システム)の早期実用化に向け、官民が連携してITSのモデルプロジェクトを実施、検証を行った上で、全国展開を図る形で、交通事故の削減につなげたいとした。
また、電子政府については、現状でも96%の行政手続きを電子申請できる環境にあるが、納税や登記をはじめ、その利用率は低位にとどまっていると指摘。新戦略では、10年度までにオンライン利用率50%以上をめざし、そのために、添付書類の電子化・廃止やインセンティブの付与などを行うとともに、公的な手続きにおいて、個人認証を行うためのICカードの導入について検討を行う必要があると指摘した。
また、高度情報通信人材育成については、日本経団連がイニシアチブをとり、産学連携による人材育成の仕組みづくりが進められており、政府としても全面的にサポートをしたいとの話があった。

その後の意見交換では、日本経団連側から、「新戦略は日本経団連の提言とも方向を同じくする内容であると高く評価できる」「今後、産業の国際競争力の強化に向け、その基盤となる研究開発への取り組みを強化し、その成果を実用化につなげ、再投資につながるような好メカニズムを構築すべき」との意見が出された。また「新戦略の具体化に向け、実証実験を行うことはよいことだが、その際、実証後の実用化段階も視野に入れて計画を立てるべき」との発言があった。

このほか当日の会合では、情報通信委員会の体制変更、部会長の交替について報告があった。従来、ワーキングレベルで検討を行っていた、高度情報通信人材育成については、来年4月の拠点大学院設立に向け、大学側との連携・協力体制を強化するため、今般、「高度情報通信人材育成部会」を新設し、部会長として、NTTデータの山下徹副社長が就任することとなった。また、電子化、情報セキュリティ、インターネットガバナンス等に係る問題を検討する情報化部会の部会長に、新たにリコーの遠藤紘一取締役専務執行役員が就任することになった。

【産業本部情報通信担当】
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