日本経団連タイムス No.2801 (2006年2月16日)

「食の産業部会」が初会合を開催

−食育推進で意見を聴取


日本経団連の産業問題委員会(岡村正委員長、齋藤宏共同委員長)はこのほど、食に係わる産業の振興を目的に食の産業部会を新設し、東京・大手町の経団連会館において7日、第1回会合を開催した。会合では、部会長に就任した西野伊史・アサヒビール常務取締役のあいさつ後、内閣府食育推進室の持永秀毅参事官から政府の食育推進活動について説明を聴取、意見交換を行った。

説明の中で持永参事官は、食への正しい知識と問題意識が必要との観点から、2005年6月に食育基本法が成立したと紹介。背景にある児童の朝食欠食や中高年を中心とする肥満の増加、食品廃棄の多さなど、現代日本の食生活の問題点を指摘した。また食生活において、外食および惣菜・デリカといった中食の比重が高まっていることから、これらの現状を踏まえた形で食育を推進することが必要であると述べた。
また、食育取り組みに向け、同法に基づき食育推進会議(本部長=小泉純一郎総理大臣)が設置されたことや、下部組織の食育推進基本計画検討会(座長=猪口邦子内閣府特命担当大臣)において2006年3月をめどに食育推進基本計画策定をめざしていることを説明。今後5年間の計画では、食育に関心を持つ国民の割合を現在の70%から90%へ引き上げることや、食育推進に係わるボランティア数を20%増やすことなど、定量的目標を定め、推進していくとの意向を示した。さらに、産業界に対しては、食品関連事業者による体験活動の機会提供や情報提供、各地域での食育活動への参加などについて協力を求めたいと語った。

意見交換では、日本経団連側から「食育推進において産業界が担うより具体的な役割は何か」という質問に対し、持永参事官は、「現在食育に興味の無い層への教育・啓蒙の観点から、外食産業等で食事バランスガイドの紹介を行ってほしい」とこたえたほか、基本計画策定においてパブリックコメント等を通じ産業界からも意見を寄せてほしいとの意向を示した。
その後、事務局から、同部会の基本方針として「幅広い食の場面をカバーし、業界振興のための環境整備を行う」ことが提示された。

続いて集まった約20名の委員から、各社の食育活動紹介や食に関する問題提起が行われた。とりわけ食の安全に係わる分野への関心は高く、アレルギー対策としての成分表示の重要性や農薬のポジティブリスト制導入への懸念がみられたほか、食のトレーサビリティ問題については、海外輸入など複雑化する食品流通の中で、「個別企業の対応では限界がある」という意見が多く寄せられた。さらに業界によっては食に関する問題意識があっても資金やノウハウの蓄積が不十分で対応が進みにくいといった課題を明示。
また、高カロリー食品等に対する偏ったイメージを払拭する取り組みや、高級志向・健康志向など、多様化するニーズへの対応などに苦労している各業界の事情が紹介された。
今後部会では寄せられた意見を踏まえ、有識者からの説明を聴取しつつ、順次問題解決に取り組むこととしている。

【産業本部産業基盤担当】
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