日本経団連タイムス No.2801 (2006年2月16日)

産業技術委員会産学官連携推進部会を開催

−博士課程教育で説明聴く


日本経団連産業技術委員会産学官連携推進部会(山野井昭雄部会長)は7日、東京大学の平尾公彦大学院工学系研究科長・工学部長から、博士課程教育に関する東京大学の取り組み等についての説明を聴取するとともに、意見交換した。
同部会がこのテーマで会合を開催したのは、近年の大学院の整備によって増加した大学院生、特に博士課程修了者の就職難が深刻化する中、産業界で活躍できる博士号取得者の育成等が重要な課題となっているため。
部会ではまず、平尾工学部長から、(1)深刻なポストドクトラル問題(2)今後の大学院教育のあるべき姿(3)修士・博士一貫コースの導入――について次のとおり概要の説明があった。

1.深刻なポストドクトラル問題

1990年代初頭から始まった大学院重点化によって大学院の定員が大幅に増加した結果、博士号取得者の就職難が深刻化している。就職できない博士号取得者はポストドクトラル(以下、ポスドク)となり、30代後半になっても安定した職業に就けていない。これは、予算獲得のために学生を大量に入学させた大学にも責任はあるが、博士課程修了者に対する社会のニーズを開拓しないまま定員数を増加させた文部省(当時)の政策にも問題があった。
ポスドク問題は社会問題化しつつあり、早急な対策が求められる。具体的には、(1)博士課程定員の適正化(2)産業界のニーズを見据えた大学院教育改革(3)政治決断によるポスドク救済(4)日本独自の研究体制の導入――が必要である。

2.今後の大学院教育のあるべき姿

これまで、博士課程では後継者養成が中心であったが、今後は産業界でリーダーシップを発揮できる人材の育成も必要である。そのためにも、出口管理を厳しくして企業等の信頼に応えるとともに、カリキュラムを体系化して学生に必要な講義の受講を義務付けることで、幅広い体系的知識を身に付けさせる必要がある。また、複数教授による指導体制、英語能力の強化、企業等におけるインターンシップの拡充、海外研修も重要である。このほか、博士課程学生に対する経済的援助の充実も不可欠である。

3.修士・博士一貫コースの導入

これまでは、学部卒業後5年間かけて博士号を取得することになっていたが、学部卒業後4年、優秀な人については3年で博士号を取得できるコース設置を検討している。このコースでは研究者養成だけではなく、エリート養成、産業界が採用したくなるような人材育成を目的としており、学生選抜を厳格にするとともに、インターンシップや海外研修も充実させ、優秀な学生をさらに伸ばしていくことにしている。

◇ ◇ ◇

意見交換では委員から、(1)修士課程修了後に3年間企業で働いた人と博士号取得者の能力に違いがみられない(2)博士号取得者は専門分野に強いが、マネジメント力に弱いので、語学を含めたゼネラルな教育が必要――などの意見が出された。
最後に、平尾工学部長から、人材育成における産学連携や、留学生の研修受け入れについて、企業に対する期待が述べられた。

【環境・技術本部技術担当】
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