中央社会保険医療協議会(中医協)は15日、医療機関にかかった場合の価格である診療報酬点数の改定案を厚生労働大臣に答申した。同改定は3月上旬に告示され、4月1日から新しい診療報酬となる。
2004年の春に発覚した汚職事件を受けて改革が行われて以降の中医協としては、診療報酬点数の改定を実施するのは今回が初めて。中医協の改革により、(1)改定率は内閣が予算編成過程で決定する(2)診療報酬改定の基本方針は社会保障審議会が策定する(3)厚生労働大臣は(1)(2)に基づいて改定案を作成するように諮問を行う――ことになっており、1月11日に厚生労働大臣から、マイナス3.16%(本体マイナス1.36%、薬価等マイナス1.8%)の改定率を前提に、社会保障審議会医療保険部会・医療部会が取りまとめた「診療報酬改定の基本方針」に沿う形で診療報酬の改定案を作成するよう諮問がなされた。
諮問を受けて、中医協では改定の「現時点の骨子」を1月18日に取りまとめ、国民の意見の募集を行うとともに(1月18〜27日)、横浜において公聴会を開催した(1月27日)。これらの国民の視点を重視する新しい仕組みの中で、寄せられた意見は4000通を超えるなど、新しい中医協への関心が非常に高まる中での答申となった。この間、日本経団連では、05年10月に発表した「国民が納得して支える医療制度の実現」(05年10月20日号既報)で、公的医療保険の持続可能性維持のために、患者の視点を重視し、効率的で質が高く、わかりやすい診療報酬体系の実現を提言した。また、中医協においては日本経団連推薦委員が、この提言を踏まえて積極的に発言。国民からの意見の募集に際しては、西室泰三社会保障委員長名の意見を提出するなど、積極的に対応してきた。
今回の主な改定の内容は次のとおり。
これらの改定のうち、医療費の内容のわかる領収証の無償交付の義務化や初診料の病院と診療所の一本化などは、わかりやすい診療報酬の実現の面で、評価できる点である。また、処方せんの標準様式の変更についても患者の視点の重視や薬剤費の適正化などの面から、効果が期待できる。さらに、効率的な医療を実現する面で、急性期入院医療におけるDPCの対象病院の拡大に加えて、慢性期入院医療においても、新たに包括支払方式が導入されたことは大きな前進であった。
なお、ニコチン依存症患者への禁煙指導を公的保険の給付範囲にすることについて使用者側委員は、国民的なコンセンサスが得られていない中では、自己責任で対応すべきものであると主張し続けたものの、最終的に公益委員の判断により導入が決定した。今後は公的医療保険に導入したことによる効果などについて、注意深く検証を行っていく必要がある。