日本経団連タイムス No.2803 (2006年3月2日)

ブラントBT会長との懇談会開く

−BTの変革と戦略について聴取


日本経団連の情報通信委員会(張富士夫委員長、石原邦夫共同委員長)は2月24日、東京・大手町の経団連会館で、英国通信企業最大手、BT(ブリティッシュ・テレコム)のクリストファー・ブランド会長との懇談会を開催した。会合ではブランド会長から、BTの変革に向けた取り組みと今後の戦略について講演を聴くとともに、意見交換を行った。

講演の冒頭、ブランド会長は、2001年にBT会長に就任した当時を振り返り、多額の債務を抱えていた当時のBTにおいて、明確なビジョンの提示とそれに基づく事業の変革が不可欠な状況にあったと指摘。その具体化に向け、(1)ブロードバンドや移動体、IPネットワークの構築など新サービスの促進(2)従来の電気通信企業の枠を抜け出し、顧客志向型のサービス企業への転換――を軸として、変革を進めてきたと述べた。
新たなサービスの展開については、昨年、「21世紀ネットワーク計画」を策定したことを紹介。今後総額100億ポンドを投資し、従来の交換機ベースの電気通信ネットワークからIPネットワークへの転換を進めるとした上で、これにより、ブロードバンドを介し、テレビ番組の配信や医療サービス、オンラインゲームなどさまざまな革新的サービスを展開できるようになるだろうと述べた。
さらにブランド会長は、これからの電気通信を語る上でのキーワードは「融合」であるとし、今後、通信とIP、固定と移動体、端末間、サービス間など、さまざまな形での「融合」が進むと強調。例えば、携帯電話ではカメラ付き携帯など、端末の融合が進んでいる一方、今後さらに、クレジットカードやスキャナ、また個人の認証システムといった役割も果たすなど、マルチメディアのコミュニケーション端末として進化していくだろうとの見方を示した。BTにおいても、「BTフュージョン」の名の下、世界に先駆けて固定と移動体通信の融合サービスを提供し、固定、移動体の区別なく、端末、番号、料金等を一本化した形でのサービス提供を行っていくと説明した。
最後にブランド会長は、電気通信事業に関わる立場から注視すべき点として、(1)事業機会が拡大する中でのアウトソーシングの重要性(2)世界経済における中国の存在の高まり(3)ネットワークや顧客情報のセキュリティ確保(4)複雑化する知的財産権の保護への対応(5)コーポレートガバナンスの重要性――を指摘した。

その後の意見交換では、日本経団連側から、通信と放送の融合問題に関する見解について問われ、ブランド会長は、「通信、放送事業者ともめざす方向は同じだが、それを実現する手段は異なる。顧客ニーズに根差したサービスの展開に向け、競争というよりは、互いに相補完する役割を果たしたい」と述べた。また、今後、サービスの融合など、新規参入者による競争の激化が見込まれる中で、BTはどのように対処するのかという質問に対しては、英国政府は競争促進に向け、新規参入者に対してBTの持つ電気通信ネットワークへのアクセスを開放する方針を打ち出したが、BTとしては競争を通じて、自らの競争力をさらに高めていきたいとの抱負を語った。

【産業本部情報通信担当】
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