日本経団連タイムス No.2803 (2006年3月2日)

企業とNPOの子育て支援協働推進セミナー開催/こども未来財団

−子供が健全に育つ環境づくりへ


日本経団連の関連団体であるこども未来財団(根本二郎会長)は2月18日、東京・千代田区の弘済会館において日本フィランソロピー協会(浅野史郎会長)との共催で、「企業とNPOの子育て支援協働推進セミナー2006」を開催した。「未来を拓く子どもをどう育てるか」をテーマとした同セミナーには約160名が参加。次世代育成支援の取り組みをしっかり考えたいという企業担当者や、地域や企業との連携を一層深めたいとするNPO関係者、また子連れで参加した子育て中の主婦らが一堂に会し、子どもが健全に育つ環境をどうつくるか、またそれぞれの立場でどういうサポートができるかなどを熱心に意見交換し、その方策を探った。

支援策などを探り意見交換

シンポジウムでは、主催者のあいさつの後、「次世代育成支援〜企業の役割、地域社会との協働」と題して岩田喜美枝・資生堂取締役執行役員が基調講演を行った。

岩田氏は、自身の育児体験を振り返り、仕事との両立の中で“決して順調ではなかった”との本音も披露。「それでも子育ては幸せなこと。人生に深みや広がり、精神的な豊かさをもたらす」と子育ての意義を述べるとともに、今後の企業経営では、次世代を育成支援する視点は欠かせないとの見解を示した。
そこで、「ファミリーフレンドリー」「ダイバーシティ」「ワークライフバランス」「CSR経営」――などを挙げ、企業が仕事と家庭の両立に向け、取り組むべき人事政策や経営戦略の考え方を説明。とくにワークライフバランスによる多様な社員の確保は、企業にとって新しいビジネス価値を生み出す源泉であると指摘した上で、子育て期の女性に限らず、すべての社員が仕事とそれ以外の活動(家族や生涯学習、趣味、社会貢献など)を両立できるよう、推進していくことが重要であると強調した。また、恒常的な残業をいかになくすかといった働き方の見直しや、多様な働き方が選択できる制度を考える必要があると述べたほか、それは長期的に見れば、多様性・創造性に富んだ、時間当たりの生産性が高い優秀な人材を育成することとなり、競争力の高い企業の基盤をつくることになるだろうとの見方を示した。
最後に、資生堂の次世代育成支援行動計画について、これまでの成果や今後の課題などを紹介。「子育てしながら活躍し続けることができる職場にすることは、『社員』というステークホルダーを念頭においたCSRの課題の1つ」との考えに触れるとともに、次世代育成支援という社会的課題に対しては、社会貢献活動の一環として取り組んでいきたいとの意欲を示した。

続いて、度山徹・厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課少子化対策企画室長から「少子化の現状と次世代育成の取り組み〜今後の展望について」と題した基調報告が行われた。報告の中で度山氏は、「次世代育成支援のための行動計画策定の義務づけには日本の企業風土を変えるねらいもある。父親が子どもに向き合う時間が持てるようになることは、子どもにとって重要なこと」と指摘した。

その後は、(1)子育て支援〜育児参加の裾野を広げる、(2)子どもの健全育成〜学ぶ心を育て、成長を支える、(3)国際化と子ども〜外国人と日本人の子どもが共に育ちあう環境づくり、(4)地球環境と子ども〜共に学びあい、豊かな地球環境を次世代に手渡す――などのテーマ別に分かれて分科会を開催。「男性の育児参加」「子どもの居場所」「学校やNPOとの連携」「社会全体のあり方や大人の果たすべき役割」「多様性」「自立心や他者を尊重する心」「世代間交流」などのキーワードを挙げてパネリストが問題を提起。参加者からも積極的な意見や質問、提案が出され、盛会裏に終了した。

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