日本経団連タイムス No.2806 (2006年3月23日)

「観光立国基本法」制定に向け提言

−民間事業者の責務明記など盛り込むべき論点示す


日本経団連(奥田碩会長)は22日、「観光立国基本法の制定に向けて」と題する提言を公表し、関係各方面に建議した。

現在、自民党の観光特別委員会において、1963年に成立した現行の「観光基本法」を廃止し、新たに「観光立国基本法」を制定する作業が行われている。そこで日本経団連では、昨年6月の「国際観光立国に関する提言」2005年6月30日号既報)の趣旨を踏まえつつ、「観光立国基本法」の構成や同法に盛り込むべき論点に関する提言を発表することとしたもの。

今回の提言ではまず、(1)魅力ある国づくり(2)文化的で豊かな国づくり(3)交流人口の拡大による産業や地域の活性化(4)国際交流の促進による草の根レベルでの相互理解――を観光立国の究極の目的と捉え、観光を国策として推進することを、「観光立国基本法」の前文ならびに、「目的・理念規程」に明記するよう主張している。
その上で提言は、国や地方公共団体、民間事業者、国民の責務について定めるよう主張している。現行の「観光基本法」には、国や地方公共団体の責務は明示されているが、観光を国策として推進する以上、質の高い観光商品の提供や、ホスピタリティの向上は民間事業者、国民が主体的に取り組むべき課題であり、この点についても明記する必要がある。
提言では次に、観光立国基本計画の策定の必要性に言及。観光立国基本計画を策定し、そこに施策、スケジュール、成果目標等を明記するよう求めている。

訪日外国人旅行者増大など

以上を前提に提言は、基本的計画に盛り込むべき施策として、(1)訪日外国人旅行者の増大(2)国民の観光旅行の推進(3)インフラ整備(4)観光資源の保護と育成(5)景観整備(6)観光旅行の安全確保――を挙げている。
また、(1)訪日外国人旅行者の増大に関し、ビザの発給要件の見直しや、海外におけるプロモーション活動の推進強化に言及している点(2)国民の休暇取得の促進について言及している点(3)インフラ整備に関して、人材育成や観光統計の整備といったソフト面の充実に言及している点(4)観光資源の保護・育成について、環境に配慮した「持続可能な観光」、また、エンターテイメントを通じた集客交流の拡大に言及している点(5)昨年6月に成立した「景観法」の活用による地域主体の景観整備に言及している点――等は、現行の観光基本法に無い新たな論点であり、「観光立国基本法」に是非とも盛り込まれるべき論点である。
提言では最後に、観光立国が多数の省庁にまたがる課題であるため、内閣総理大臣を本部長とし、関係省庁の長と民間の有識者で構成される「観光立国推進本部」を設置するよう求め、同本部が主体となって観光立国基本計画を策定し、その実現を図ると共に、政策評価を行うよう主張している。

日本経団連では、「観光立国基本法」に提言の趣旨が最大限反映されるよう、観光委員会が中心となって、引き続き政府・与党に働きかけを行っていく予定。

【産業本部国土担当】
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