日本経団連タイムス No.2806 (2006年3月23日)

中国地方経済懇談会開く

−構造改革の推進と活力あふれる中国地域の確立に向け意見交換


日本経団連(奥田碩会長)と中国経済連合会(中国経連、高須司登会長)は9日、宇部市内のホテルで「第34回中国地方経済懇談会」を開催した。同懇談会には、奥田会長はじめ、三木繁光副会長、宮原賢次副会長、勝俣恒久副会長、張富士夫副会長、三村明夫副会長、高原慶一朗新産業・新事業委員会共同委員長ら日本経団連の首脳役員、中国経連の会員企業代表者など約230名が参加した。今回は、「構造改革の推進と活力あふれる中国地域の確立に向けて」を基本テーマに、活動報告や諸課題についての意見交換が行われた。

懇談会冒頭、中国経連の高須会長はまず同地域の経済について、原油・原材料価格の高止まりや増税、金利の上昇などから先行きは必ずしも楽観できるとは言えないものの、製造業を中心に回復傾向にあると説明した。この景気を持続的なものとするためにも、官業の民営化や規制改革などさらなる構造改革の推進が必要と指摘。中国経連においても、企業活力を引き出すために、規制の緩和・撤廃などに向け関係方面へ働きかけを行っていくとの考えを示した。
また、域内の課題についても言及。社会基盤整備の必要性を訴え、(1)地域の一体的発展に向けた山陰側道路の早期整備(2)少子・高齢化に対応した都市のコンパクト化、バリアフリー対策――などへの支援・協力を呼びかけた。さらに、分権型社会の実現の必要性を強調し、「道州制」への早期移行に向け、課題解決に積極的に取り組んでいく意向を示した。
最後に、中国経連が今年、設立40周年を迎えることを報告。今後も中国地域の持続的発展に向け努力を傾注したいと語った。

■活動報告

第1部では、日本経団連から、三木副会長が「憲法改正をめぐる動向」、宮原副会長が「通商政策への取り組み」、張副会長が「行政改革への取り組み」について活動を報告。

続いて中国経連からは、まず徳永幸雄副会長が「地域産業の活性化」について発言。域内の産学官連携は、より実践的な連携に向けて、広域的ネットワークの拠点である「中国地域産学官コラボレーションセンター」を中心に積極的に活動を展開していることを紹介。産学のニーズ・シーズのマッチングによる共同研究や実用化を促進するための支援のほか、地域の金融機関の持つ取引先企業との幅広いネットワークを活用した「企業ニーズ主導の“産学金”交流活動」にも注力していると説明した。一方、「産学官連携は転換点を迎えている」と指摘。今後は、既存産業の技術革新・改良にも目を向けた連携など、より実効性のある仕組み作りを構築し、新たな価値創造に向けた連携を深化させていきたいと語った。

次に、宇田誠副会長が「瀬戸内海国立公園に関する取り組み」を報告。“多島美”としてその景観が称えられる「瀬戸内海国立公園」が、より愛され親しまれるための課題点を調査し、その結果を、(1)景勝地としての一層の利・活用の推進(2)自然環境と景観の保全(3)誇りと愛着を次世代層中心に涵養させる取り組みの推進――などの要望として取りまとめ、今年2月に環境省など関係方面へ提言したことを紹介した。さらに宇田副会長は、素晴らしい地域資源に磨きをかけるべく、沿岸域の自治体や住民との連携を図りながら取り組んでいきたいとの考えを示した。

岡彬副会長からは「観光振興について」報告が行われた。中国ブロックが一体となった「中国地域観光推進協議会」が、中国ブロック観光情報サイト「まち歩き中国ナビ」による英語、韓国語、中国語での情報発信や、韓国および台湾の旅行業関係者などを招請しての「中国地方国際観光ビジネスフォーラム」の開催を通じ、外国人旅行者の誘致促進を図っていることなどを紹介。今後も、中国ブロック一体となった取り組みの強化や、四国・九州地方との連携が不可欠とした上で、中国経連では、広域連携の核である「中国地域観光推進協議会」に対し、引き続き積極的な支援を行っていきたいとの考えを示した。さらに、観光振興の前提として、活力ある街づくりや地域づくり、景観整備などの重要性も強調した。

少子・高齢化対策や人材育成など

■自由討議

第2部の自由討議では、中国経連側から「全国に先駆けて人口減少に転じた域内はもとより、日本全体にとって少子・高齢化対策は喫緊の課題。行政や地域とともに、企業でも意識改革に努め、仕事と家庭の両立に向けた子育て支援に取り組むべき」「産学連携に向けた相互理解の推進には人材交流が不可欠。大学研究者の企業への派遣機会が不十分であり、その拡充のためのインターンシップ制度を利用してはどうか」「域内の特性を活かした新産業・新事業も少しずつ育ってきているが、産業クラスター形成の強化・発展に向けては、産と学をつなぐコーディネーターの育成など人材育成が重要なファクターになっていく」「電子タグやITSといった、ユビキタスにかかわる技術革新とその利用促進に向け重点的な取り組みが必要」「地球温暖化の防止には、民生・運輸部門の一層の対策が必要であり、国民1人ひとりの努力が大切。環境税の導入は民間の活力を奪うだけでなく、企業活動に深刻なダメージを与えかねない」――などの発言があった。

これらに対して日本経団連側は、「人口減少への対応は一刻の猶予もならない最優先課題。日本経団連としても少子化対策を経済界自らの問題としてとらえ、検討しており、近く提言を取りまとめる」(勝俣副会長)、「産学の人材交流を推進する上で、インターンシップの対象を大学の教員まで拡大するなどが検討課題」(勝俣副会長)、「人材の育成はもちろん、起業家を物心両面で支援し起業意識を醸成するネットワークの場の提供も重要。日本経団連では起業フォーラムの開催のほか、成功した起業家が後進の指導にあたるメンター制度の構築に向けた検討を進めている」(高原新産業・新事業委員会共同委員長)、「日本経団連では今後、ICTの技術革新とその利用促進に向け、ITSや医療、電子政府、教育、研究開発をはじめ、戦略の具体化に向けた取り組みを強化していく」(張副会長)、「地球温暖化対策については環境自主行動計画を中心に引き続き積極的に取り組んでいく。国際競争力の低下につながる環境税には産業界の一致した意見として強く反対していく」(三村副会長)――などとコメントした。

最後に総括を行った奥田会長は、「中国地域が地域の特性を活かしながら、将来の発展に向けた具体的な取り組みを行っていることが印象的だった」との感想を述べるとともに、今後人口減少化社会の到来とグローバル競争の激化に対応した企業環境の整備や企業戦略は不可欠と指摘。企業経営者は、現在において10年先の将来の姿を描き、経営にあたるべきであるとの考えを示した。

【総務本部総務担当】
Copyright © Nippon Keidanren