日本経団連タイムス No.2808 (2006年4月6日)

日独ビジネス・シンポジウム開催/WTO、イノベーション、拡大EUでの日独経済協力論議

−世界経済発展へ日独の役割重要、奥田会長が指摘


日本経団連(奥田碩会長)とドイツ産業連盟(BDI、J・トゥーマン会長)は3月22日、東京・大手町の経団連会館で日独ビジネス・シンポジウムを開催した。同シンポジウムには両国の関係者約200名が参加、WTO、拡大EUにおける日独経済協力、イノベーションの3つをテーマに意見を交換した。

開会あいさつで奥田会長は、世界規模でビジネス環境が大きく変化していく中、世界経済を安定的に発展させていくために、経済大国である日独両国が担う役割はきわめて重要であると指摘。その上で、日独両国が政策対話を進め、相互理解と連携を深めることは、単に2国間関係の強化を図るにとどまらず、「国際社会が直面するグローバルな課題を解決する基盤を築くことになる」と語った。

続いてあいさつに立ったトゥーマンBDI会長は、日独両国の共通関心事項や類似点として、(1)アジアにおいて日本が最重要の市場であるように、ヨーロッパにおいてドイツは最重要の市場であること(2)両国ともWTOドーハラウンドの成功に強い関心を持っていること(3)両国とも人口構造の変化に晒されており、今後の経済成長にとって重要な鍵は知識とイノベーションであること――などを列挙。これらの諸点について両国がどのように協力を深めることができるかを、このセミナーで探りたいと述べた。
「ドイツ―国際市場におけるパートナーとして」と題し基調講演を行ったM・グロース・ドイツ連邦経済技術大臣は、ドイツ国内における研究開発の実情を報告。その上で、ナノテクノロジーなどの先端技術分野をはじめとするさまざまな研究開発において、日独の協力を深めていくことの重要性を強調した。

3セッションで意見交換

■第1セッション

続いてシンポジウムは第1セッションに移り、「WTOドーハラウンドの妥結に向けて」と題し、桑田芳郎日本経団連貿易投資委員会企画部会長、トゥーマン会長がスピーチを行った。この中で桑田部会長は、新ラウンド交渉において特に重視する分野と今後の課題として、(1)鉱工業製品について、途上国や先進国にも一部残る高関税の引き下げを実現するため、スイス・フォーミュラを支持する。あわせて分野別に行われている関税撤廃・調和への取り組みや、非関税障壁撤廃に対する取り組みの推進を求める(2)サービスの自由化に向けて、自由化を求める複数国が、複数の相手国に対してリクエストを提出する複数国間交渉を足がかりに、自由化を求める相手国と分野を一層明確化し、効果的に交渉を進める(3)可能な限りレベルが高く、かつ具体的なルールの作成が重要である。特に、貿易円滑化に関する協定の作成と、アンチ・ダンピング協定の改定について、今年7月末までの条文案の提示を確実に実現する必要がある――の3点を指摘。新ラウンド交渉進展に向けて日独経済界が連携すべきであると述べた。
またトゥーマン会長は、WTO新ラウンド交渉の年内妥結については、全体状況からみて楽観視できないが、その妥結によって関係する者全てにとって貿易改善の大きなチャンスが与えられ、経済成長と国の発展がもたらされることを忘れてはならないとした。

■第2セッション

第2セッション「拡大EUにおける日独経済協力」では、A・グラフ・ラムスドルフ欧州議会議員、不破久温日本経団連ヨーロッパ地域委員会企画部会長、B・ライビンガーTrumpf社CEOが発言。ラムスドルフ議員は、ここのところEU拡大の速度は抑制がかかっているものの、依然としてEUが世界最大の魅力ある市場であることを強調。日本がEUに直接投資を行うのは正しい選択であると述べた。
不破部会長は、日独が密接な経済関係で結ばれている背景には、両国の社会構造や経済に類似性が大きいという事実があると分析。両国の持つ高度な技術やビジネスモデルを相互活用し、両国が叡智を結集すれば、地球環境問題や、省エネルギー・省資源、少子化・高齢化への対応などの面で一層の貢献が可能になるとの考えを示した。あわせて、日本とEUが高度な関係を構築し、グローバルな課題を解決して、世界経済の安定と発展を可能にする鍵は、日本と、EUの牽引役であるドイツとの経済協力関係にあると語った。
また、ライビンガーCEOは、拡大するEUにあっては、地政学的見地から、ドイツがEU新規加盟国へのスプリングボードとなり得ると述べた。

■第3セッション

最後に行われた第3セッション「イノベーション―経済成長と競争力の源泉」では、J・ハンブレヒトBASF社会長、笠見昭信日本経団連産業技術委員会科学技術政策部会長、T・エンダースEADS社CEOが意見を表明した。ハンブレヒト会長は、資源には乏しいが技術革新力に恵まれ、付加価値の高い製品を生み出すことに長けている日独両国が、イノベーションの面で協力を深めれば、両国ともに高い国際競争力を維持できることを強調。化学やナノテク分野、自動車、エネルギー、健康産業などでの両国の協力を呼び掛けた。
笠見部会長は、イノベーションとは技術革新を通じて社会・経済をも革新し、より豊かな社会を構築することであると定義。イノベーションを達成するには、知の創造をイノベーションの種の創出に結び付ける第1ステップと、イノベーションの種を育て社会にインパクトを与えるイノベーションにつなげる第2ステップがあること、それを成功させるためには産学官の共同が必要であることを指摘した。
また、エンダースCEOは、早期にイノベーションを達成した企業が世界市場で勝利を得るとの考えを示すとともに、EUの航空宇宙産業への日本企業の参加を促した。

【国際経済本部欧州・ロシア担当】
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