日本経団連タイムス No.2809 (2006年4月13日)

報告書「日加経済連携強化に向けて」公表

−共同研究終了後の方向性示す/検討すべき課題を提起


日本経団連カナダ委員会(吉野浩行委員長)は6日、報告書「日加経済連携強化に向けて―共同研究終了後の方向性に関する考え方―」を公表するとともに、日加政府間共同研究における公聴会で、同委員会の三浦一朗企画部会長が内容を説明した。同委員会は、2004年以降、日加経済連携の具体策を検討し、同年8月に日加経済枠組みの創設を求める中間報告<PDF形式>をとりまとめた。05年11月の枠組み開始後は、同枠組みのもとで行われている共同研究終了後の方向性について検討した。なお検討に当たっては、カナダ委員会・同企画部会、貿易投資委員会・同企画部会、アメリカ委員会・同企画部会に属する240社・61団体を対象にアンケートを実施、44社・5団体から回答を得た(回答率16%。回答結果は、報告書参考資料<PDF形式>参照)。

◆日加経済連携強化の方向性について

日加経済関係は、欧米やアジアとの貿易・投資関係に比較して低水準にあることは否めない。しかしながら報告書では、カナダは質の高い労働力と技術、豊富な資源を有しており、経済連携の強化には十分な意義があると評価した。
経済界にとって重要または解決が可能な課題を早急に解決するためには、ビジネス環境の整備(サービス分野を含む日加投資協定の締結、日加規制改革対話の創設、租税条約の改正、税制改正に関する財務省間対話の創設、協力案件の推進等)を先行して進める必要がある。物品の貿易の促進に関しては、農林水産品等センシティブ品目の存在、WTO新ラウンド交渉による自由化の進展、カナダと他国とのFTA(自由貿易協定)/EPA(経済連携協定)締結状況を考慮しつつ、将来的に、FTA/EPAの締結の可能性を含め、検討を進めるべきであるとした。
政府間共同研究が06年秋に終了した後に関しては、「貿易投資の促進に向けた環境整備に関する協定」の締結交渉を開始することを提案した。同協定には、官民でFTAのメリット・デメリットを含む貿易投資の自由化に関する日加間の検討会合を定期的に開催すること、サービス分野の自由化を含む投資協定、規制改革・税制改正に関する検討の促進、基準の相互認証、協力案件の推進等を盛り込むことを求めた。
なお、カナダと韓国等とのFTAの締結等の状況変化に鑑み、カナダ市場においてわが国の競争条件の不利な状態を是正することが急務であり、日加双方に全体としてメリットが大きいと判断された場合には、日加間のFTA/EPAの締結交渉の開始に向けて、協議を開始すべきであるとした。

◆両国の経済連携強化に向けて検討すべき課題

アンケートの結果、企業活動に支障となっている両国の関税の例として、カナダは乗用車・貨物自動車(6.1%)、鉄道用車輪(9.5%)、映画用フィルム(6.5%)、磁器製碍子(3.0%)、日本はSPF製材(4.8%)、OSB(主要構造用面材、6.0%)が挙げられた。なお、乗用車に関しては、04年の対加輸出総額の33.9%を占めている。
カナダで規制改革を要する内容に関しては、アンケートをもとに、連邦と州の規制の調和、会社法取締役国籍要件の撤廃、金融・保険サービスの自由化、基準の共通化・相互認証、行政手続きの円滑化、ビザ発給手続きの簡素化および有効期限延長ほかについて、重点を置いて進めるべきであると整理した。
また、経済連携強化のための日加相互の協力に関しては、わが国経済界の関心分野として、エネルギー・天然資源、観光促進、投資促進、鉄道・港湾整備ほかについて指摘した。

【国際経済本部北米・オセアニア担当】
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