日本経団連タイムス No.2809 (2006年4月13日)

第295回ILO理事会開催

−公務員への労働基本権付与を日本政府に勧告


国際労働機関(ILO)の第295回理事会が3月16〜31日の日程で、ジュネーブで開催された。
今理事会では、2008年総会における国際文書作成をめざす3つの技術議題のうち、2議題が決定した。

第1の議題は、技能開発が生産性向上や雇用拡大に重要な役割を担っていることから、経済・社会政策とも連動した実践的な技能開発戦略等について討議を行う「生産性向上、雇用拡大に資する技能」(一般討議)である。第2の議題は、世界の貧困層の多くが住んでいる地方における貧困を減少させるために、必要な雇用政策、教育訓練などについて討議する「貧困減少に向けた地方における雇用の促進」(一般討議)となった。

ILOでは、政策決定機関の運営改善が共通課題として認識されている。今理事会では特に年次総会のあり方について討議した。使用者側からは、総会の役割について政策的な議論を行うことと、労働基準を設定することに分け、それぞれを毎年交互に開催し、会期も短縮するとの具体的な提案を行った。しかし、労働側の反対にあって合意が得られず、継続審議となった。

ILOにおいても移民労働の問題が強い関心を集めている。昨年10月に開催した専門家会議では、「労働力移動に関する多国間討議の枠組み」が作成された。本枠組みは、移民労働者の人権保護や秩序ある労働移動プロセス、社会への統合などに関する15の原則と、原則を実施するためのガイドラインから成る。理事会は本枠組みを採択した。

今年2月、ILO海事総会において、海事労働法典とも言うべき「海事統合条約」が採択された。本条約はILOの海事関係の条約・勧告約60本を現状に合う内容に改めた上で一本化したもので、約5年間にわたる政労使協調による準備の結果、採択に至ったものである。このことに理事会は歓迎を表明した。

長年にわたって、強制労働が問題になっているミャンマーに関して、本理事会でも議論が行われた。ミャンマー政府の強制労働根絶に向けた取り組みが遅々として進まず、ILOとの効果的な対話も見出せない現状を踏まえ、本件を6月のILO総会本会議で取り上げて討議することとなった。

日本の労働組合(連合・全労連)から出されていた公務員制度改革に関する提訴を受け、「結社の自由委員会」は中間報告をまとめ、政労協議が開始されたことに注目した上で、日本が批准している団結権、団体交渉権に関するILO条約に則り、日本政府に対し公務員に労働基本権を付与することを求める勧告を行った。理事会は同報告を採択した(本件に関するILO勧告は02年、03年に続き3回目)。

CAPE理事会も

また、ILO理事会会期中の3月23日には、アジア太平洋経営者団体連盟(CAPE)の理事会がジュネーブで開催された。本年7月に、モンゴル・ウランバートルでCAPE傘下の21の経営者団体トップが参集する「アジア太平洋経営者団体サミット」の議題を「内外経済の変化に対応するアジア太平洋地域の経営者団体の役割」と決定した。

【労働法制本部国際関係担当】
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