日本経団連タイムス No.2810 (2006年4月20日)

「少子化に関するアンケート」調査結果発表/経済広報センター

−少子化の進行「不安」82%、結婚先延ばし原因「結婚の価値観変化」83%


日本経団連の関連組織である経済広報センター(奥田碩会長)は先ごろ、「少子化に関するアンケート」の集計結果<PDF>を発表した。04年の合計特殊出生率が1.29と過去最低水準を更新するなど、喫緊の課題となっている少子化問題は、社会の関心も高く、同調査の回答率は83.7%と2000年以降で最高を記録した。
調査結果の概要は次のとおり。

60歳以上で高い不安感

少子化の進行について、「不安に感じる(非常に/ある程度)」が82%。「非常に不安を感じる」の回答を詳細にみると、男女別では男性44%、女性38%と男性で高くなっており、年代別では60歳以上が47%と、他の年代より10ポイント程度高かった。これは、60歳以上は年金受給が始まっている世代で、少子化の進行による社会保障制度への影響を懸念し始めているためと思われる。

社会保障制度崩壊など懸念

少子化に不安を感じる理由として、「社会コミュニティ、社会保障制度(特に年金)、国の財政(公債はだれが払うのか)が崩壊する可能性が高いこと」「生きること・生命(種)の存続という生物共通の根源的なものに対する意識の希薄化」「家族・親族のつながりを通し、人と人のつながりを身近に学ぶこと(機会)の減少」――などが挙げられた。

女性は「仕事と家庭の両立」に不安

少子化の原因の1つに「未婚化・晩婚化の進展」が指摘されていることを受け、結婚(初婚)を先延ばしにする原因についてきいたところ(複数回答)、「結婚の価値観が変化しているから」が83%(男性81%、女性85%)と男女とも最多。次いで「独身生活が快適だから」54%(男性55%、女性54%)、「仕事と家庭の両立に不安があるから」49%(男性44%、女性52%)、「経済的に不安だから」36%(男性42%、女性32%)、「仕事に集中したいから」23%(男性17%、女性27%)の順であった。
男性の回答では「経済的不安」が多く、女性の回答では「仕事と家庭の両立に不安があるから」と「仕事に集中したいから」が多かった。これらの回答の背景には、ある年齢に達したら結婚することが自明のことといった以前の画一した社会通念が希薄化するとともに、親・職場を含めた社会一般からの結婚に対する圧力が減少したこと、深夜営業店舗の増加など社会環境の変化で、独身生活のデメリット・不便さなどが低下していることなどがあると思われる。また、女性に関しては、「仕事と家庭の両立に不安があるから」に約半数が「仕事に集中したいから」に約4分の1が回答していることから、結婚後の家事や育児の負担が女性に重くなっていることがうかがえる。

政府の少子化対策の方向性「出生率上昇・低下防止の対策を」86%

対策の必要性は国民的合意

今後の政府の少子化対策の方向性については、「出生率が上昇するような対策を取るべき」(45%)と「少なくとも、これ以上出生率が低下しないような対策を取るべき」(41%)を合計すると86%にのぼり、「産む、産まないは個人の選択の問題なので、国が少子化対策を行う必要はない」との回答は8%、「現行の少子化対策で十分」は3%にとどまった。少子化対策の必要性は、国民的な合意の域に達していると思われる。

「職場の環境整備」望む

さらに、少子化対策として重要なことは(複数回答)、「仕事と育児を両立しやすい制度など、職場における環境整備」との回答が78%と最も高く、次いで「必要とするすべての人が利用できる保育サービスなどの充実」52%、「児童手当など子育て世代への経済的支援」51%であった。なお、これら回答を年代別にみると、30歳代以下では「仕事と子育てのしやすい職場環境の整備」「児童手当などの経済的支援」「保育サービスの充実」など、「出生率が上昇するような対策」の回答が他の年代よりも高く、出産・子育ての年代層が積極的な対策を期待していることがみてとれる。

財源は予算配分変更で

少子化対策の財源については、「増税はしないで、国家予算の配分比率を少子化対策に振り分けるべき」が53%と最も高く、次いで高い「増税はしないで、社会保障給付費の3.8%である児童・家族関係給付費の配分を高める」(27%)と合計すると8割が、増税しないで、予算配分の変更による少子化対策の推進を求めていることがわかる。一方、「消費税を上げるなどの増税はやむを得ない」との回答は12%。これを男女別にみると、男性が18%、女性が8%と男性が10ポイント高く、年代別では、60歳代以上が18%、29歳以下が15%と他の年代よりも高かった。

◇ ◇ ◇

調査の対象は経済広報センターが組織する、全国のさまざまな職種、世代で構成される「社会広聴会員」の4748名で2月に実施した(有効回答は3974名、男性40.4%、女性59.5%、有効回答率83.7%)。
アンケートの詳細に関しては、経済広報センター国内広報部(電話03−3201−1412)まで。

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