日本経団連タイムス No.2811 (2006年4月27日)

新産業・新事業創出へ提案

−起業家ネットワークなど、連携体制推進を


日本経団連は18日、意見書「人的ネットワークと地域クラスターを通じた新産業・新事業の創出へ」を公表した。同意見書は新産業・新事業委員会(高原慶一朗、原良也共同委員長)が行った米国および日本国内のクラスター(産業集積地域)の視察をふまえて策定され、起業と新産業創出を通じた日本の経済活性化のため、これらの促進要因である「人」「技術」「場所」の3点における連携の強化を主張している。
日本経団連では同意見書をもとに関係各方面に働きかけを行うこととしている。同意見書の主な主張は次のとおり。

■起業家ネットワークの構築

米国西海岸クラスターで発達している起業家同士や専門家を結びつける起業家ネットワークを、日本でも充実させることが肝要である。特に、起業成功者が後進起業家の先達として経営面のアドバイスを行い、起業家の精神的支えとなるメンターを日本の風土に合わせた形で根付かせるべきであり、さらに、地方における専門家の充実やWEB上での起業家の情報交換等を促進し、起業家支援体制を整える必要がある。

■イノベーションサイクルの構築

自前主義から脱却し、大学・研究機関、ベンチャー企業、大企業が各々の強みを活かして研究開発から試作化、製品化までのオープンなイノベーションサイクルを構築することが必要である。そのため各主体間の一層の人材流動化を進め、特に大学・大企業からスピンアウトした起業家が大学・大企業へ容易に復帰できる双方向の人材移動システムを構築すべきであろう。また、密接な関係構築により、性能評価や市場動向をスムーズにフィードバックし、技術や市場ニーズの変化に対応した製品開発を行うことも必要である。

■クラスターにおける連携体制の構築

クラスターを構成する各機関が強みを活かした連携関係を構築すべきとして、(1)政府・自治体は起業環境と起業理念の長期的醸成を担うとともに、商品調達時に一定割合をベンチャー企業からの調達とする経営支援策や、民間研究を支える寄付文化の定着などを推奨する(2)ベンチャーキャピタルは外部の評価機関等も活用して技術、経営両面の審査能力を十分に発揮するとともに、地元密着性を深めて投資後も取引先の斡旋や役員を派遣するなど手厚いケアを行う(3)大学・研究機関は産学連携推進に加え、高度な研究成果を地域に定着させたり、将来のクラスターを担う若手研究者の視野を広げるよう取り組む(4)大企業は自社がもつヒト、モノ、ノウハウの活用を進め、未使用特許の活用やベンチャー企業の経営部門への人材登用機会を創出する――ことを提案する。特に、大企業の人材活用については今後退職を迎えるいわゆる「団塊の世代」に着目し、スキル活用に期待を寄せている。

【産業本部産業基盤担当】
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