日本経団連タイムス No.2812 (2006年5月11日)

資源・エネルギー対策委員会を開催

−加納参議院議員(自民党エネルギー戦略合同部会事務局長)と懇談


日本経団連は4月24日、東京・大手町の経団連会館で、自民党のエネルギー戦略合同部会事務局長である加納時男参議院議員を来賓に招き、資源・エネルギー対策委員会(秋元勇巳委員長)を開催した。加納議員は、「エネルギーセキュリティと環境適合の同時実現を図る自民党のエネルギー戦略」と題して、現在、党内で検討が進められている総合エネルギー戦略の視点について、個人的な見解という前提で講演、その後、出席者と意見交換を行った。
加納議員の講演概要は次のとおり。

1.急変するエネルギー情勢と増大する懸念

現在、エネルギーを取り巻く3つの危機感がある。第1に、化石燃料の需給逼迫傾向である。石油の枯渇懸念や発展途上国における需要の急増を背景とし、石油・天然ガスの価格が急騰している。また、日本が原油輸入の9割を依存する中東が政治的に緊張している。第2に、気候変動の懸念である。異常気象の主因とされている二酸化炭素濃度を大幅に削減する必要があり、抜本的な技術革新が求められている。この2つを前提に、わが国のエネルギー安全保障が懸念されている。日本のエネルギー自給率はわずか4%であり、1次エネルギーの45%は中東に依存するという脆弱な状況である。

2.将来ビジョンの構築・具体化

この危機感の下で、2つの将来像を描いている。第1に、地球レベルでの持続的成長である。「持続的」というのは、資源・環境の両面であり、また、発展途上国・先進国ともに成長できるという意味である。第2に、わが国のエネルギー安全保障の確保である。地球レベルの持続的成長の中でわが国自体の存立も確保しなければならない。

3.バックキャストによる個別戦略策定

この2つの将来像を踏まえ、現在なすべきことをバックキャストすると、次のようなエネルギー戦略が必要となる。決め手は技術開発である。

(1)資源確保戦略

化石燃料は今後も最も重要なエネルギー源であり、わが国としては、積極的に上流資源開発を進める。そのため、政府一体となった民間支援体制を構築することや、資源外交の司令塔の創設も重要である。

(2)テロ対策等

エネルギーのインフラや輸送の安全確保に向け、日米安保体制の強化、テロ対策、シーレーン防衛の強化が重要である。

(3)原子力平和利用と核不拡散の両立

原子力平和利用に向けて、核兵器疑惑国へのIAEA査察の強化などが重要である。わが国としても核不拡散に貢献するとともに、米国が提唱するGNEP(国際原子力エネルギーパートナーシップ)に参加協力をする。

(4)化石燃料のクリーンで効率的な利用促進

化石燃料のエネルギー効率をさらに向上させるとともに、温暖化対策として二酸化炭素回収貯留研究を推進する。

(5)原子力の活用

次世代炉への置き換えや高速増殖炉の開発を進め、核燃料サイクルを着実に推進する。国と自治体の役割、地域共生方策などの条件を整備する。

(6)再生可能エネルギーの活用

再生可能エネルギーについて、その意義概念を確立する。バイオマスの実用化や宇宙太陽光発電などの長期的研究を推進する。

(7)ポスト京都議定書

温暖化防止に向け、現在、京都議定書から離脱している米国、豪州や中国・インドなど途上国での排出削減を確実にする仕組みとすること、APP(アジア太平洋パートナーシップ)のような大国間で重点分野別に協力することが重要である。また、京都メカニズムであるCDM(クリーン開発メカニズム)に原子力や省エネプロジェクトを取り入れ、日本の技術で世界的な貢献をすることも必要である。

◇ ◇ ◇

当日はこのほか、提言「わが国を支えるエネルギー戦略の確立に向けて(案)」の審議を行った。

【環境・技術本部エネルギー担当】
Copyright © Nippon Keidanren