日本経団連タイムス No.2813 (2006年5月18日)

産業界・企業の少子化対策、「基本的取り組み」で提言

−「働き方の再考」など提案


日本経団連(奥田碩会長)は10日、「産業界・企業における少子化対策の基本的取り組みについて」と題する提言を公表した。また、同日、和田紀夫副会長および茂木賢三郎少子化対策委員長から猪口邦子内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画)に、また15日には茂木委員長から川崎二郎厚生労働大臣に提言書を手交し、国等に対する要望事項の早期実現等を要請した。

日本経団連は、昨年5月に少子化対策委員会を新設し、「人口減少社会への対応=人口減少を前提とした経済・社会システムの構築」と「少子化対策=出生率の低下に歯止めをかけ、上昇に転じさせる努力をすることで、できるだけ人口減少の速度を緩和すること」の両面でのアプローチによる検討を重ねてきた。このうち、ここ5年程度においては、いわゆる団塊ジュニア世代が子どもを産む主な年代となることなどを受け、緊急かつ集中的に「少子化対策」に取り組むことが必要であることから、今般は、人口減少の速度を緩和し、日本経済・社会が新たな時代にソフトランディングしていくための「少子化対策」に焦点を絞り、産業界・企業が取り組むべき事項を中心にとりまとめた。

同提言の主なポイントとしては、まず、少子化対策に“特効薬”はなく、国や地方自治体、産業界・企業、地域コミュニティ、国民といった各主体が連携し、「国民的運動」を展開するとともに、複合的な取り組みが必要であることを指摘している。
その上で、産業界・企業の立場・役割を踏まえ、産業界・企業としては、「働き方の再考―多様な働き方の整備」と「両立支援を促進する職場風土の醸成」に向けて、主体的に取り組むべきであることを挙げている。なお、その際には、少子化対策を自らの問題と認識し、短期的にみるとコスト負担となる可能性もあるが、将来への“投資”と位置付けて、可能な限り対応することの必要性も示している。

日本経団連はこれまでも、多様な働き方の選択肢の整備・提供を主張してきたが、今回はさらに深掘りして、選択肢それぞれに応じて、仕事の内容や処遇、キャリア形成やその速度が異なることを企業が明確に打ち出すことの重要性を説いている。
また、制度の整備のみならず、それを利用しやすい職場風土醸成など、制度の運用面での改善や工夫も重要であることから、特に各職場のキーパーソンとなる管理職が、自らも当事者の1人であるという意識を持って、自らの時間管理を含む職場管理や部下育成に努めることの必要性も指摘している。

さらに同提言は、国や地方自治体・地域等の対策の重要性と、それに対して企業がどのように協力・連携でき得るか、ということについてもまとめている。「保育サービスの充実・効率化」については、これまで同様、民間活力の活用や競争原理の導入を求めるとともに、いわゆる学童保育等小学校就学後の保育サービス充実の必要性なども指摘。「地域における子育て支援」については、自治体・NPO等による地域で子育てを支援する仕組みづくりの必要性や、企業における協力の一例として、地域での子育て支援に関心の高い従業員やOB・OGへの情報提供等を挙げている。

また、どのような価値観を持つかについては本来個人の自由であり、出産や育児に関する意識についても画一的に啓発すべきものではないが、子育てにおけるマイナス面ばかりが強調される傾向があることから、同提言では、あえて、「意識啓発・教育」の問題にも踏み込んでいる。具体的には、子どもを持つこと・育てることの意味・意義やすばらしさについて、小・中学校の時から、教育の現場などを通じて伝えることや、職業とともに、子育てを重要な一部として含んだ人生設計全般について、教え、考えさせるキャリアデザイン教育・研修の実施が望まれることも指摘している。

【国民生活本部国民生活担当】
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