日本経団連タイムス No.2817 (2006年6月15日)

中小企業委員会開く

−「06年版中小企業白書」のポイント聴取


日本経団連の中小企業委員会(指田禎一委員長)は5月26日、都内で会合を開催し、経済産業省中小企業庁事業環境部の花木出・調査室長から、「2006年版中小企業白書」のポイントについて説明を聴取した。

この中で花木室長は、中小企業の景気動向について、景気の回復が本格化する中、業種・地域によって依然ばらつきがあり、今後も注視していく必要があるものの、中小企業の業況も緩やかに改善を続けていると指摘。設備投資を手持ち資金の範囲内に手控えたことで過剰な設備・債務が解消し、雇用についても過剰感が解消したことが要因であると述べた。

一方、開廃業率については、開業率は上向きに転じたが、廃業率がこれまで以上に開業率を上回っている現状を指摘。その結果、中小企業の数は毎年12万社ずつ減少していると述べた。その主因として、個人事業主が高齢化し、引退の時期を迎えているとの見解を示した。また、中小企業の資金調達手段の特徴として、小規模企業になるほど資金調達を借り入れに依存する傾向があるが、近年、金融機関は、中小企業向け貸し出しに際して、財務データだけでなく市場動向や技術力評価にも力を入れる傾向がみられると述べた。

また、最近、中小企業の海外進出が活発化していることについて、現地マネジメント人材の確保、売掛債権の回収、部材確保や模倣品対策など多くの課題がある中で、海外進出は単なる空洞化ではなく、国際展開により、中小企業のビジネス全体が高度化、自立化し、東アジア経済との関係が深化していると説明。中小企業の技術レベルの高さを背景に、近年は「投資の国内回帰」が起こっている現状もあるが、5年後には東アジア企業に対する技術力における優位性もなくなると考えている企業が多く、今後、大企業とも綿密に連携し、常に新たな技術開発に取り組んでいくことが重要と述べた。

さらに、少子高齢化・人口減少社会が中小企業に与える影響として、事業継承と技能継承を指摘し、事業継承についてはM&Aを有効に活用することを提案。技能継承については、風通しの良い職場づくりや若者を成長させるための取り組みを行うことで、若年層の定着率を上げること、あるいは仕事と育児の両立を支援することで、女性を活用することを挙げている。

委員会では、これまで聴取した意見などを踏まえ、今月中に報告書を取りまとめる予定。

【労政第一本部企画担当】
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