日本経団連タイムス No.2818 (2006年6月22日)

中央アジア4カ国外務大臣・外務次官と懇談

−各国経済の現状など聴取


日本経団連は6日、東京・大手町の経団連会館で中央アジア4カ国外務大臣・外務次官との懇談会を開催、日本経団連からは日本NIS経済委員会の辻亨副委員長らが出席した。辻副委員長の開会あいさつに続いて、4カ国の外務大臣・外務次官が、各国経済の現状と展望、事業環境整備に関する政府方針や取り組みについて説明した。

ウズベキスタン共和国のガニエフ外務大臣は、同国の状況について、(1)外国投資保護法が機能しており、独立以降、外国投資誘致規模は150億ドル、外資企業は3000社となっている(2)民営化プログラムにより約2300社が民営化され、うち60%は完全な外資企業となる予定である(3)投資対象としての魅力を高めるプログラムが常に実施されている――と説明する一方、「日本の進出は他国に比べ遅れている」と指摘した。ガニエフ外相は、将来性の大きい協力分野として、エネルギーや鉱業、石油ガス、化学、電気製品、繊維、機械製造、テレコムを含むIT、観光を挙げ、特に石油ガス、石油化学の将来性が大きいことを説明。その上で、「日本との直行便も就航しているので、観光分野の協力も進むと考える。政府を代表し、日本企業が快適にビジネスができるような条件整備を約束する」と語った。

キルギス共和国のジェクシェンクロフ外務大臣は、同国が政治や経済、民主制を刷新し、国民生活を改善すべき時期に入っていると述べた上で、これまでの成果は、諸外国との貿易経済関係の発展によってますます着実なものにできると語った。また同国が、水力発電や鉱業、金採取、建設、農産物加工、観光といった戦略的分野で日本企業の積極的参加を望んでいることを表明。このうち観光に関しては、(1)イシククリ湖をはじめ、豊かで変化に富む自然が財産になっている(2)観光業は中央アジア全体をカバーする一大産業に成長し得る(3)外国企業には、観光インフラ整備に参加してもらえる。イシククリ空港の2期工事、ホテル整備などがある――と説明した。またジェクシェンクロフ外相は、日本の経済界にキルギスに来てほしいと発言。「中央アジアには共通点もあり、また多様性もある。中央アジアと日本の対話に非常に期待している。地域全体をカバーするプロジェクトを幅広い分野で実施することが可能である」との考えを示した。

タジキスタン共和国のナザロフ外務大臣は、同国が経済改革のスピードアップを趣旨とする経済政策を展開し、広範な分野での民営化や構造改革、銀行改革、中小企業育成、優先分野への外資誘致に向けた条件整備などを図っていることを紹介。このうち「優先分野」は、第1が水力発電、第2が非鉄金属、特にアルミニウム生産であると説明した。また、(1)輸送網整備が焦眉の課題である(2)観光業も重要である(3)綿花の加工処理の発展は雇用の創出にもつながるので日本との互恵的ビジネスとして発展させたいと考えている――などと述べた。その上でナザロフ外相は、「タジキスタンでは外国投資の安全保障のための条件が整備されている」として、議会が投資促進のための法律(税制上の特典、技術設備の輸入に関する税金免除など)を採択していること、外国企業の収益は金額に関係なく自由に交換でき、国外に持ち出せること、入国ビザが先進国に対しては簡素化されていること、タジキスタンは海への出口を持たないが、安くて水準の高い労働力を活用できれば、輸送コストを補って余りあること、現在、タジキスタンとビジネスをしている国はビジネスが順調であると評価し、拡大を計画していることなどを挙げ、「日本にも進出してほしい。政治経済情勢やビジネスチャンスをその目で確かめに来てほしい」と語った。

カザフスタン共和国のアブドラフマノフ外務次官は、(1)経済の成果はエネルギー分野に負うところが大きい(2)一方で、エネルギー輸出への依存を脱却する必要があり、イノベーション政策に力を入れている(3)資金を集中すべき経済クラスターとして、石油ガス産業向けの機械製造、食品生産、繊維生産、ロジスティクス、冶金、建材生産、観光がある――と説明。その上で「日本とカザフスタンの貿易はわずか5億ドルである」と述べ、今後の中央アジアと日本との対話の進展に期待感を示した。その上でアブドラフマノフ次官は、中央アジア各国には、日本を含む外国投資誘致にとって良好な条件が整備されていること、カザフスタンには優先分野のプロジェクトに関しては企業税を最大10年間免除する制度があること、入国ビザが簡素化されていることなどを挙げた。

意見交換では、「インフラ整備に不可欠な自動車や建設機械のメンテナンスに携わる若いエンジニアのトレーニングセンターを地域全体で作り、共通で利用してはどうか」との日本経団連側出席者の提案に対し、中央アジア側は、大変興味深い提案であると応じた。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
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