日本経団連タイムス No.2819 (2006年6月29日)

報告書「中小企業の人材確保と育成について」取りまとめ

−問題点と方策など示す


日本経団連は20日、報告書「中小企業の人材確保と育成について」<PDF>を取りまとめた。同報告書は、「中小企業における環境変化」「中小企業における人材面での問題点」「中小企業の人材確保・育成のための方策」「人材育成が拓く中小企業の未来」の4章および企業事例等の別添資料からなっている。主な内容は次のとおり。

■不足する中核人材

景気回復により大企業が人材採用を積極的に行い始める一方で、中小企業の人材獲得は逆に厳しくなっている。国境を超えた競争の激化など環境変化の中で、中小企業が特に必要としている中核的な人材としては、(1)いわゆる「右腕人材」(2)技術動向を的確に把握できる人材(3)顧客開拓・販売のプロとしてのセールスエンジニア(4)ICTを使いこなせる人材――が考えられる。また、問題点としては、(1)企業の知名度・ブランド力が弱い(2)就労条件に対するイメージが悪い(3)必要な人材像が明確でない――などが挙げられる。

■人材確保・育成のための方策

多くの中小企業では、最初から世間一般で「優秀」と呼ばれる人材を採用することは難しく、「普通の人材」の中から採用して、育成しなければならない。また、従業員一人ひとりが企業の命運を左右する度合いが大企業に比べてはるかに高く、いわゆる「自立型人材」がとりわけ求められる。自立型人材とは、「自分でPDCAサイクルで仕事を進められる」人材である。このような能力は、本人の自覚と努力次第で十分獲得可能であり、この自立型人材が、これからの中小企業に必要な人材へと成長していくことが期待される。
そのために中小企業が取るべき方策としては、(1)人材採用ルートの多様化(2)企業風土の絶えざる変革(3)人事制度の改革(4)5Sの徹底等職場環境の改善と従業員の活性化(5)企業間、産学官等の関係諸機関との連携――が求められる。

人材採用ルートの多様化としては、(1)インターンシップ制度の充実・活用(2)実力ある高齢者の活用、OB人材の活用(3)大企業からの人材受け入れ(4)パートタイムや派遣等、多様化する就業形態の活用――などが挙げられる。
また、自立型人材育成のためには、優秀な若手の早期抜てきなど社内の風土を絶えず変化させることが必要である。さらに、従業員の自助努力を前提とした、役割や能力、成果に応じた処遇制度への改革が必要であり、そのためには、「コミュニケーション」「透明性」「信頼」「納得」も重要である。

■中小企業の人材確保・育成に対するスタンス

人材を採用し、社内で人を育てる仕組みは多様である。しかし、中小企業の人材確保・育成に対するスタンスとしては、総じて次のようになると思われる。

(1)自社の人間は自社で育てるという意識

経営者自身が自社の人材採用・育成基準を明確にし、常に内外に対して発信し続ける

(2)自社の発展・成長に対する情熱の従業員との共有

組織全体で企業が発展していくという意識を持たせる

(3)積極的な情報発信

就業希望者へ中小企業で働くことの可能性を提示していく

【労政第一本部企画担当】
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