日本経団連タイムス No.2820 (2006年7月6日)

「海外経済協力と国際金融業務のあり方に関する提言」発表

−海外経済協力会議や新政策金融機関など


日本経団連は6月20日、「海外経済協力と国際金融業務のあり方に関する提言」を発表した。

小泉純一郎総理大臣が進める政策金融機関の改革については昨年から政府内において、民間でできるものは民間に移管した上で基本的に1つの機関に統合するという指示の下、各機関の持つ機能をどのように整理・再編するかが議論されてきたが、国際協力銀行(JBIC)の扱いについては、最後まで大きな争点として残った。
JBICには、わが国の貿易・投資活動を支援する「国際金融業務」と、政府開発援助(ODA)の円借款を担当する「海外経済協力業務」の2つの機能があり、これらをそのままの形で維持するのか、分割するのか、分割した場合にはそれぞれをどういう組織とするのか、なかなか意見がまとまらなかった。他の政策金融機関の扱いが決まった昨年11月末の段階でも決着がつかず、12月中旬から安倍晋三官房長官の下に「海外経済協力に関する検討会」を新たに立ち上げ、JBICの組織のみならず海外経済協力のあり方全般を議論することとなり、日本経団連からも西岡喬副会長が検討に参加した。

こうした議論を経て、(1)内閣総理大臣主導の下、官房長官、外務大臣、財務大臣、経済産業大臣をメンバーとする司令塔「海外経済協力会議」を新設し、官邸機能を強化する(2)JBICの国際金融業務については、国内政策金融機関とともに1つの政策金融機関に統合した上で一定の独立性を確保する(3)JBICの円借款業務については、国際協力機構(JICA)と統合する――とした報告書が今年2月末に取りまとめられた。
その後、この報告書を受け、JBICをはじめ、政策投資銀行や国民金融公庫などすべての政策金融機関の改革の基本的な方向性が盛り込まれた、いわゆる行革推進法が5月26日に成立し、今後は、実際の組織・体制づくりをめざし、具体的制度設計の段階に入っていく。

日本経団連としては、新しくできる海外経済協力の体制が、先述の報告書、そして行革推進法でうたわれた基本方針どおりのものになるよう期待する意味で、今回の提言を取りまとめた。
提言の主なポイントは、(1)海外経済協力会議については、ODAから民間資金までを視野に入れ、わが国にとっての重要課題を、機動的かつ実質的に審議できるものとして機能し続けることを期待すること(2)新政策金融機関については、国際金融業務の独立性が維持されることが重要であり、ブランド・対外交渉力の維持、業務・会計、ならびに資金調達の独立性、専門性といった面がきちんと担保されること(3)新しいJICAについては、円借款、無償資金協力、技術協力という3つのメニューの連携がきちんととれるようにすること――などである。
日本経団連としては、今後の具体的な制度設計の議論を注視していく考えである。

【国際第二本部国際協力担当】
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