日本経団連タイムス No.2821 (2006年7月13日)

社内広報委員会開く

−社内広報センター05年度決算、06年度予算を承認


日本経団連の社内広報委員会(野村哲也委員長)は6日、東京・大手町の経団連会館で第5回委員会を開催した。

野村委員長は冒頭あいさつの中で、広範な業種で企業業績が改善し、景気が着実に回復していると指摘する一方、原油・資源価格などの高騰、世界的な金利の上昇、為替変動などの不安要因のほか、国内でも少子化社会の進行、国や地方の巨額な財政赤字などの課題も多く、企業を取り巻く経営環境はあまり楽観できるものではないとの見方を示した。
さらに、「社内では嘱託、人材派遣、パート、アルバイトなど雇用形態が多様化する中で、それぞれいろいろな価値観を持つ従業員が共に働き、企業組織を支えていく時代になってきた。価値観や意識の違う個性のある従業員が企業理念や行動規範を共有するためには、経営トップと従業員、従業員同士をつなぐ社内広報の役割はますます重要になってきた」ことを強調。「私自身、活字社内報やイントラ社内報でいろいろな話題、考え方を紹介している」と語るとともに、経営トップと従業員、従業員同士の良い関係を築くためには、経営トップが社内広報を通して自らの言葉で語りかけることが大切であると訴えた。

次いで、委員の交代および新任委員の紹介を行った後、議案の審議に移り、社内広報センターの2005年度事業報告案・収支決算案、06年度事業計画案・収支予算案が、それぞれ原案どおり承認された。
最後に、日本広報学会理事長であり、静岡文化芸術大学副学長兼文化政策学部長の上野征洋氏が「情報ネットワークの進化と社内広報のゆくえ―新しい役割と重要性―」と題して講演を行った。

上野氏はこの中で、従業員が携帯電話やメールで仕事をするようなユビキタス社会になると、情報がスピード化・短縮化される構造が生まれ、受発信する従業員は企業を代表する意思決定者と外部からみなされるという怖さがあることを指摘。さらに情報ネットワーク化が進み、コミュニケーションネットワークが複雑になればなるほど、その条件としてスピードと公開性、透明性が極めて重要になり、まさに企業のアイデンティティーが問われる時代になってきたことを強調した。
さらに上野氏は、ネットワーク化の進展、成果主義や利益至上主義によって企業の性格・特色が薄められ、企業のアイデンティティーが弱化することへの懸念を示した。その上で「今、社内広報で取り扱うべき課題は、企業のキャラクターや企業の持つべき職業倫理、あるべき姿であり、社内で情報を共有するときは“企業らしさ(エイトス)”、企業を特徴づけているものは何か、そこで働く従業員の職業倫理とか行動規範がどのように成立しているのかを改めて考えることが大切である」として、「“企業らしさ”を取り戻す社内広報が今、求められている」と結んだ。

【事業サービス本部社内広報担当】
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