日本経団連タイムス No.2822 (2006年7月20日)

宇宙開発利用推進委員会が総会開催

−宇宙産業の国際競争力強化など06年度事業計画を承認


日本経団連の特別委員会である宇宙開発利用推進委員会(谷口一郎委員長)は11日、東京・大手町の経団連会館で総会を開催した。総会では、規約の一部変更、2005年度の事業報告と収支決算、2006年度の事業計画と収支予算、ならびに役員の一部改選について審議し、承認された。その後、鈴木一人筑波大学助教授から講演を聴取した。

規約の一部変更については、5月24日の日本経団連臨時会長・副会長会議において、「宇宙開発利用推進会議」を「宇宙開発利用推進委員会」へ改称することが決まったことに伴い、規約を改正することとしたことを説明。
05年度の事業報告に関しては、ロケットの打ち上げ再開や第3期科学技術基本計画の策定等、わが国の宇宙開発利用が節目を迎える中、宇宙開発利用の着実な推進に向けた取り組み、宇宙開発利用の重要性に関する啓蒙活動等を行ったとの説明がなされた。
具体的内容としては、準天頂衛星フォーラムの開催、総合科学技術会議フロンティア分野推進戦略プロジェクトチームにおける谷口委員長の意見表明、会報「宇宙」第54号「21世紀日本の宇宙戦略」の出版等であることが報告された。

続いて、06年度事業計画についての説明が行われた。ロケットの連続打ち上げ成功等により、宇宙開発利用に対する国民の期待が高まっているものの、厳しい国家財政の下、宇宙関連予算の削減によって疲弊しているわが国宇宙産業を活性化させるため、事業計画では、(1)宇宙の産業化促進のための環境整備(2)国際交流(3)広報・調査――の3つを挙げている。
具体的内容としては、(1)宇宙産業の国際競争力強化や宇宙の安全保障への活用などを盛り込んだ「宇宙基本法」策定に向けた産業界の提言取りまとめや、準天頂衛星システム推進に向けた民間利用の検討(2)訪日関係者との意見交換(3)会報「宇宙」の出版――等が盛り込まれた。
最後に、役員の一部改選について、新任3名を含む常任委員12名および監事2名の就任に関する説明が行われた。

議事終了後には、筑波大学の鈴木助教授が「21世紀型宇宙開発に向けた国家戦略の構築の現状」をテーマに講演。宇宙開発に関する現状認識を説明した上で、右肩上がりの予算を前提にした研究開発主導による20世紀型宇宙開発と、利用者重視、政府機関の最適化を特徴とする21世紀型宇宙開発についてそれぞれ解説し、わが国の今後の宇宙開発に対する示唆を行った。
質疑応答では、諸外国と日本の宇宙開発の違いについて質問が出され、鈴木助教授からは、欧州では各国が宇宙開発の目標を常に議論し、論理的な説明が求められるのに比べ、わが国ではそのような議論があまりなされず、必要のないことまでやってしまう傾向にあるとの回答があった。

【産業第二本部宇宙担当】
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