日本経団連タイムス No.2823 (2006年7月27日)

経済政策委員会開く

−「持続的経済成長に向けた新たな戦略」、経産省・北畑事務次官から聴取


日本経団連の経済政策委員会(奥田務共同委員長、森田富治郎共同委員長)は18日、東京・大手町の経団連会館で、北畑隆生・経済産業事務次官から、「持続的経済成長に向けた新たな戦略」についての説明を聴いた。

はじめに北畑事務次官は、今年6月に産業構造審議会の報告書として「新経済成長戦略」が出された後、政府・与党一体で取り組む施策を集大成した「経済成長戦略大綱」がまとめられ、さらに同大綱の骨子が「骨太の方針2006」に盛り込まれた上で7月7日に閣議決定された、と説明した。
その上で、「経済成長戦略大綱」の基本的考え方について解説。具体的には、(1)構造改革型の景気回復が実現した今を好機ととらえ、成長戦略を集中的に講じることにより、中長期的成長につなげることが必要(2)1990年代後半に財政健全化を急ぎ過ぎて失敗した教訓を活かし、今回は「経済成長戦略」と「歳出・歳入一体改革」を車の両輪とし、相互に好循環を生み出す(3)1人当たりGDPが伸びればよいなどの低成長路線は間違いであり、経済全体の活力向上、財政・社会保障の持続可能性維持のために、一定の経済成長が不可欠(4)戦後、日本は豊富な労働力を活用して高度成長を実現したが、労働力人口が減少する中で経済成長を図るには、1人当たりの生産性向上が必要であり、ロボットやITの活用、生産性の高い産業への人的資源の集中が重要(5)「経済成長戦略大綱」の政策効果が最大限発揮されれば、今後10年間で実質GDPは年率2.2%以上になる見込みである――と述べた。

次に北畑事務次官は、「経済成長戦略大綱」の具体的施策について説明。第1に、「国際競争力の強化」について、(1)産学官の連携を図り、イノベーションを生み出すことで、国際競争力を強化する(2)農林水産業、医薬品・医療機器産業、銀行業などにおける国際競争力強化策を、各府省が足並みをそろえて推進する(3)観光業の国際競争力を強化し、観光立国の実現を図ることで、国内需要を喚起する(4)現在、日本が加工品や部品などの中間財を中国へ輸出し、それを中国が組み立て、欧米に輸出するという三角貿易が成り立っているが、今後も中間財生産を中心に国際競争力を高める――と述べた。
第2に、「生産性の向上」については、(1)日本は海外に比べ、サービス産業の生産性が低いことから、ITの活用、サービス6分野(健康・福祉、育児支援、観光・集客、コンテンツ、ビジネス支援、流通・物流)への政策の重点化等により、サービス産業の生産性の向上を図る(2)サービス統計を充実させ、経営の効率化を図る必要がある――と説明した。

最後に、「生産性向上の5つの制度インフラ(「ヒト」「モノ」「カネ」「ワザ」「チエ」)」のうち、とりわけ「ヒト」について、(1)「人財立国」の実現をめざし、文部科学省と共同で、教育分野の産学官連携を図り、義務教育段階から働くことの必要性・重要性を学べる教育をめざす(2)高専・工業高校と産業界との連携強化、高専卒業者や社会人の大学院(マスター)への受け入れ等により、今まで埋もれていた専門性のある人材を活かす――と述べた。

【経済第一本部経済政策担当】
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