日本経団連タイムス No.2823 (2006年7月27日)

アメリカ委員会企画部会/ズムワルト在日米国大使館経済担当公使らが講演

−日米経済連携強化のあり方などを示す


アメリカ委員会企画部会(本田敬吉部会長)は6月23日、東京・大手町の経団連会館で会合を開き、ジェームス・ズムワルト在日米国大使館経済担当公使(当時)、チャールズ・レイク在日米国商工会議所会頭から日米経済連携強化のあり方についての講演を聴いた。

日米経済統合推進に期待感

講演の中でズムワルト公使は、2005年の米国の対日輸出が01年に比べて減少していることを日米関係における「残念な事項」と述べ、農産品の対日輸出が90億ドルから79億ドルに落ち込んでいること、対日直接投資が米国の対世界直接投資総額の4%に過ぎないことなどを挙げた。その上で、こうした状況を改善する選択肢の1つが日米経済統合であることを強調し、両国産業界からこれを推進する声が出てくることに期待を示した。
さらに、日米経済関係強化のための課題として、牛肉問題の解決や自由貿易協定(FTA)の概念の両国間での統一を指摘。FTAとは、関税/非関税障壁、サービス、知的財産権なども含め、すべての分野でのビジネス活動を自由にすることを目的に結ぶものであるが、日本のいうFTAは本来の自由貿易協定の「FREE=自由」の部分が十分ではない恐れがあると述べた。
ズムワルト公使はまた、世界第1位と第2位の経済大国である日米が結ぶFTAはモノだけでなくサービスや知的財産権も含む高水準のものであるべきだとの考え方を改めて示すとともに、日米FTAを近い将来に締結することは難しいが、その前にも連携強化を進める方策はあるとの見解を表明。他国のモデルとなる高水準の協定が締結できるか、ビジネスに具体的な利益をもたらすことができるか、現実に合意が達成できるかの3つの基準に照らせば、(1)知的財産権(2)貿易の安全確保(3)金融サービス(4)直接投資(5)民間航空(6)食糧安全保障――の各分野で、日米経済連携強化の取り組みを進めていくことが可能ではないかとの私見を述べた。
このうち、知的財産権の分野では特許権・商標権取得について日米で二重になっている申請要件を免除することによってコストの削減を図ることなどを、金融サービスの分野では東京がアジアの金融ハブとなるようにするためにも日米が協力して金融分野で世界基準の導入を働きかけることを、民間航空の分野では日米間で民間航空の自由化に関する協定を締結することを、取り組みの具体的内容として提示した。

コア・バリュー共有を強調

続いて講演したレイク会頭は、日米経済関係を考える上での前提を列挙し、(1)アジア各国が日本企業の生産拠点となり、そこから北米・欧州に輸出が行われていることから、アジア経済は既に統合されている(2)ゴールドマン・サックスの推計によるとGDPは2050年までに、1位中国、2位米国、3位インド、4位日本となる(3)グローバル化に対応するための構造改革が必要である点などで日米は課題を共有している(4)大統領貿易促進権限(TPA)の期限が来年7月で切れるため米国が日本とのFTA交渉をいま開始するのは不可能だが、課題として認識しておくべきである。交渉が進展している米韓FTAは、驚くべきスピードで締結される可能性がある(5)米国の日本に対する通商課題としては、規制改革・構造改革、郵政民営化、牛肉問題がある――などと述べた。
その上で、基本的人権や自由、民主主義、法の支配等の価値を共有しているとはいえない中国やインドを引き合いに出しつつ、日米関係においては両国がコア・バリューを共有することが重要であると指摘。さらに、外交・安全保障の基軸である日米同盟の重要性にも言及した。
最後にレイク会頭は、在日米国商工会議所が6月22日に、日米経済統合協定(EIA)締結に関する意見書を発表したことを紹介。同意見書について、(1)日米間で、政治・安全保障だけでなく経済面でも成熟した関係を築くために、総合的かつ包括的な協定を締結すべきだという内容である(2)この内容をさらに具体化し、10月までにビジネス白書を取りまとめたい(3)金融、医療、インフラ、法律サービス、ITなどの分野ごとにワーキンググループを設置し、米国企業が現在の日本市場環境をどうみているか調査し、課題をリストアップした上で、EIAの締結可能性を分析していく(4)米国企業の日本法人のCEOを各ワーキンググループのリーダーにして、机上の空論ではなく、本当のビジネスの視点で検討していく――などと説明した。

【国際第一本部北米・オセアニア担当】
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