日本経団連タイムス No.2826 (2006年8月24日)

財政制度委員会開く

−「わが国財政の健全化方策」/財務省・藤井事務次官から聴取


日本経団連の財政制度委員会(氏家純一委員長)は2日、東京・大手町の経団連会館で会合を開き、藤井秀人・財務事務次官から、「わが国財政の健全化方策―歳出・歳入一体改革に向けた取組―」についての説明を聴いた。

はじめに藤井事務次官は、(1)現在、景気は54カ月連続で拡張しており、バブル期の51カ月を超え、さらに、いざなぎ景気の57カ月に近づいている一方、財政状況は、依然として極めて厳しい状況にあり、その危機感は国民に広く共有されているものと考える(2)財政健全化へ向けて、歳出・歳入一体改革の具体策が盛り込まれた「骨太方針2006」が7月7日に閣議決定され、これを踏まえ、2007年度予算の概算要求基準が7月21日に閣議了解された――と説明した。

その上で、まず「財政の現状」を説明。(1)欧米先進国は1990年代初頭の財政悪化の後、財政健全化に着実に取り組んだが、日本では相当規模の財政収支赤字が継続し、債務残高対GDP比も増勢の一途をたどっている(2)米国では、クリントン政権により93年に成立したOBRA93(包括財政調整法)の下、経済の持続的成長と財政再建の双方を達成した経緯があり、日本としても参考にすべきところが多い(3)90年代以降、歳出総額が増加する一方で税収が減少し、差額を新規国債発行によって補っている。今年度の新規国債発行額は30兆円を下回る水準に抑えたが、そのうち赤字公債の占める割合が8割以上という状況である(4)今年度末における普通国債残高は約542兆円と、GDPを上回る規模となっている。また2003年度以降、赤字公債残高が建設公債残高を上回る状況が続いている(5)90年度からこれまでで普通国債残高が約380兆円増加したが、その大きな要因は社会保障関係費の増加と税収等の減少である(6)国債の利払費は、低金利の影響でこれまでは低く抑えられていたが、今後の金利の動向により大幅に増加する可能性がある(7)11年度までに、国・地方を通じたプライマリー・バランスを黒字化できたとしても、経済財政諮問会議での民間議員提出資料によれば、その時点で地方のプライマリー・バランス対GDP比はプラス1.4%となる一方、国はマイナス1.4%と赤字のままであり、国・地方間でバランスのとれた財政再建が必要である――と述べた。

次に藤井事務次官は、「歳出・歳入一体改革に向けた取組」を説明。取組の具体的内容について、(1)小泉政権の5年間を財政健全化第I期とした上で、これに続く第II期(07年度〜10年代初頭)では、11年度までに国・地方のプライマリー・バランスを黒字化させ、その際、国のプライマリー・バランスも早期の回復をめざす(2)11年度にプライマリー・バランスを黒字化するための要対応額は16.5兆円であり、このうち11.4兆円〜14.3兆円は歳出削減で、残余を歳入改革による増収措置で対応することを基本とする(3)財政健全化第III期(10年代初頭〜10年代半ば)において、国・地方の債務残高対GDP比を安定的に引き下げることとし、また、国についても安定的引き下げをめざすこととする――と語った。

【経済第一本部財政制度担当】
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